大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学 |
お嫁さん・お姉さん |
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私:俚言にまつわる話で、お嫁さん・お姉さん、の事を少しお話ししよう。ネズミの事を、お嫁さん・お姉さんという地方は随分多い。飛騨地方もそうだ。飛騨ではヨメサというかな。 君:なるほどヨメ嫁・アネ姉という音韻は共通語の音韻ネズミとは完全に異なるわね。 私:そこで出てくるのが毒団子誤飲事故。ある村へ他所から嫁いだ嫁に、姑が「これはお嫁さん用の団子なのよ。」といって毒入り団子を見せるというお話。 君:姑さんは「鼠用の毒団子なのよ」と言った積りなのに、お嫁さんは姑の自分への心遣いと勘違いしてしまう、という事ね。 私:そう。方言学ではよく出てくるトピックス。例えば、2016年10月16日 3:30 [有料会員限定日経新聞]。方言は人の命に関わる・井上史雄。・・戦後まもなくのある村の話。遠くから嫁入りした人のところに近所のおばあさんが来て「お嫁さんのまんじゅうです」と言って、まんじゅうを置いていった。食べたその嫁さんは苦しんで亡くなった・・これって飛騨のお話ではないと思うがね。 君:本当にあったお話かしらね。 私:実は私は日経新聞の有料会員ではない。推察するしかない。医師の得意技は推察。 君:左七先生はどの程度、推察できるのかしら。 私:間違って食べてしまう事を誤嚥という。殺鼠剤、誤嚥、急性毒性、死亡例、等々をキーワードに国内外の医学文献を調べまくると、少しずつ見えてくるものがある。 君:いいから、簡単にひと言でお願いね。 私:ゴキブリ用などで現代の日本で手軽に手に入れられるのがホウ酸 boric acid。先ほどは PubMed 等の医学文献データベースを調べまくった。死亡例の報告もある。大半が乳児と痴呆老人。だからホウ酸団子ではなさそう、という印象だ。日経新聞の死亡例だが、やはりクマリン系の殺鼠剤だったのじゃないかな。 君:クマリン? 私:肝臓での凝固因子の生成を抑える物質。食べたネズミは脳出血を起こして死ぬ。実はクマリンはワーファリン Warfarin の名前で我々・循環器科医が処方する薬。不整脈たる心房細動の患者様に投与し、心臓に血液の塊が生じないようにする薬。 君:患者様が誤ってそのお薬を大量にお呑みになると脳出血でお亡くなりになるのね。お医者様の仕事も大変ね。私には無理だわ。 |
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