飛騨方言ではあんね・そんねという言葉が複数の意味を持つ事をお示しします。
まずは共通語であんなに・そんなにをそれぞれ、あんね・そんねと言いますが、これに加えるに
"ありぃに(=あの人に、ないし、あの物に)"及び"そりぃに(=その物に)"が撥音便化して、
それぞれ"あんね"、"そんね"というためです。
つまり"あんね"は"あの人に、あの物に、あんなに"の三種類の意味です。
そして"そんね"は"その物に、そんなに"の二種類の意味です。
文例ですが、"あんねそんねぎょうさんの金" 、といえば、あの人にそんなに沢山のお金、
つまり孫に一万円もの高額の落としだまという意味になります。もっとも、"あんねそんね"は聞きづらかろうとて、
"そんねぎょうさんの金、あんねやる(=そんなに高額のお年玉をあの子にやる)" と言う人が多いかもしれません。
ここで若し、すかさず、"そりゃそうや、あんねやらんでもええろ。" という相槌の会話があるとしますと、
"それはそうですね。あんなにやらなくてもいいでしょう。"という意味にもなりますし、
"それはそうですね。(外孫の幼稚園児の)あの子に限っては(高額すぎるから)やらなくてもいいでしょう。"
という意味にもなります。
また人称代名詞での撥音便の文例をあげますと、
"今度の会合の出席者やけど(=ですが)、わんね(=あなたに)、あんね(=ほら、あの人に)、おんね(=わたしに)、それに
会長に出席してもらうのは当然やけど、あと、だんね(=だれに)出てもらえばええかしらん?
この間の会合は人がおらなんで(=いなくて)、あんね(=あんなに)おらんでゃ(=いなくては)、話し合いとは言わんさ。"
などと用います。
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