表題の文例・おりを見る、ですが例えば、動物園でトラの檻をみる、というような意味に
なりましょう。他に同音異義語としては、沈殿物という意味の澱、折れたものという意味の折り、織物の意味の織り、
等々が日常語ですが、国語辞典には汚職の官吏という意味の汚吏、の記載もありました。
飛騨方言では更にここに第一人称代名詞・おり、が加わるのです。例えば
あいつぁおりを見て逃げていった。( = やつは私を見て逃げていった。 )
おいわりぃ、おりを見よ、この額の汗を。( = おい君、私を見たまえ、・・。 )
つまりは自身以外の対象を主語にして話すことができます。
あるいは同音異義語ゆえに飛騨方言を使う人と使わぬ人の会話で意味の取り違えがおころうかというものです。
ついで、おり見る、の考察ですが、共通語では、
いずれまたおり見て、暇見て、予算見て、時間みて、そうそう姑の顔色見てお会いしましょうね、という意味で
用いられますが、おりみて、とは機会を見て、という意味になります。
実は漢字の表記は、折り見て、になります。
つまりは、このまま状況がまっすぐいけば成り行きとしては険しいが、あるいはひょっとして
状況が折れ曲がるのをみて、という事で、折り、が当てられるのでしょう。
飛騨方言では、格助詞・を、の省略で、わたしをみる、という文が、おり見る、という文にもなります。
上記の文例は、あいつぁおり見て逃げてった、おいおり見よ、とも言い換えられます。
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