大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

おりゃ婦人科へ行って来るさ。
副題:飛騨を馬鹿にせんでもええろ(=いいでしょう)!

戻る

忘れもしません、私・大西佐七が小学生の時でした。 当時、飛騨の各地にスキー場がオープンし、つまりは中京地区を主に、どどっと都会の方が訪れだしたのです。 文明の波、まさに異文化との衝突です。 私の地元にもオープンしたそのスキー場に私も小遣い稼ぎにアルバイトに行ったものでした。村の女衆も勿論です。

調理場、売り場などで当然のことながら彼女たちの井戸端会議があります、それを傍で聞いたスキー客の方が都会の同朋に、
"おいおい!聞いたか?ここ飛騨では女の人達が自分の事を俺って言ってるよ!!こわいねえ。"
とおっしゃるではありませんか。瞬時に心が凍りついてしまった私。
・・・あーあ!恥ずかしいさ。そやで(=だから)田舎もんは都会の人に馬鹿にされるんや。おりゃ、はんちくとうて(=悔しくて)、飛騨方言は、はや(=今後はもう)おいた(=いやだ)。・・・
このような原体験は忘れようにも、忘れられるものではありません。四十年も昔のあの日の事が昨日のように、ハイ、はっきり思い出されます。

さて、飛騨方言では男性の第一人称は勿論 "おりぃ" ですが、女性でも、特に中高年以上の年配の方などは、"おりぃ" が普通なのです。 年配の方でも "私" を使っていけないことはありませんが、何となく気どった感じ、改まった感じで使われる訳です。 つまり、都会の方に、身構えて、田舎弁丸出しでしゃべってはいけないと考えつつ話す場合は、女性はやはり、"私" を使うでしょうが、 飛騨の村々で、中高年以上の年配の方同士がうちとけて話される場合は、自然に "おりゃ婦人科へ行って来るさ。" が出るはずです。

おまけの変な言い回しですが、"行って来る" というのは "行って戻って来る" という意味ではなく、単に "行く" という意味で使われていると思います。

ページ先頭に戻る