大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

行かず"は"行く"の意味、"やらず"は"やる"の意味

戻る

有巣栄里子さん
 (飛騨高山本陣平野屋女将HPコラム記事)
"☆反対言葉の数々 ・「いかず」・・・行く ・「やらず」・・・やる"

栄里子さん、大西佐七です。ああ、なるほどそうですね。でももう少し説明があったほうが、、、ごめんなさい。 うーむ、無意識に使っていましたが、推量を意味する接尾語とでもいうんでしょうか、この 〜ず、という表現は。

更に"〜ず"に "も"が付加されて 〜ずも、〜ずもお、とも言いますね。 いかずも、いかずもお(=行くのだろう)、やらずも、やらずもお(=やるのだろう) という言い回しが、さっと思い浮かびます。

"行かず"を"行くのだろう"という意味で使うのは例えばこんな感じの文例ですね。

今年の同窓会の幹事さん "なんじゃい、出欠の返事、みんなちっとも返事くれんで困ってまうなあ。今度は一泊で行くんやで、やっぱり返事がないとごがわくなあ(=怒れちゃうよ)。 なんじゃ去年の幹事の茂和も返事がないながい!!あいつぁ行くんかなあ??"
副幹事 "そりゃあ、あいつのことやで、いかずもお(=行くと思うよ)。茂和は出席でええさ。若し欠席なら銭だけカンパしてもらやぁ、ええながい。"

"やらず"を"やる(=やるのだろう)"の意味で使うのは例えば、、
父 "中三にもなって、うちのびい(=娘)ってやつはテレビばっかみて、ちっとも受験勉強せんなあ。"
母 "そのうち、やらず(=やるわよ)。こんどの日曜日に本屋さんへ行って問題集買うっていっとったよ。"

せっかくですから、もうひとひねり、上一段活用の二拍動詞、見る+"〜ず"で、 "見ず" は、"見るのでしょう" という意味の立派な飛騨方言に勿論なります。 文例としては、
大西佐七(東京語でボソリと) "こうやってホームページ一生懸命、書いていると、皆さん、また見てくれるかなあ?"

皆さん (一斉に大声の飛騨方言で) "そりぁあ、見ず(も)!!!(=見るでしょう!!!)"
追加・2005/03/11
k3.dion.ne.jp/~hougen/ 大垣方言研究所の杉崎好洋さんからメールをいただいています。氏曰く、
"行かず" の表現は,大垣でも以前使用されていたようです。 明治35年生まれの亡き祖父が,子供の頃使用していたといいます。 生で聞いたのは,長野県根羽村出身の大正15年生まれの男性(会社の先輩の父親)からだけです。 語源は,室町期の京で使用されていた「行かむと,す(=行こうとする)」だとされています。
"イカムトス" −> "イカムズ" −> "イカウズ" −> "イカーズ" −> "イカズ"
と変化してきたと考えられています(「行かん」の意味の「イカズ」とは無関係)。 新しい表現「行こう」に押されて「行かず」の使用地域は縮小,大垣では明治末には消滅したもようです。 それがまだ飛騨で使用されていたとは初耳でした。 大垣で以前使用されていた多くの表現・語彙が,まだまだ飛騨で使用されていると考えられます。
大変に勉強になりました。杉崎好洋さんどうもありがとうございました。 杉崎さん!"また、気高えー、うめー言い方の、なげー、はえー返事のメールで教えてくれへんけーなー。"

ページ先頭に戻る