大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
脳の解剖学、記憶の座 |
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私:標題に絡めて、まずは一枚の脳の矢状面の絵。どう思う?![]() 君:脳もずいぶんと細かい部分に分かれているのね。方言学には関係ない話題提供といったところかしら。 私:そんな事はない。難しそうな話を一言で説明したいと思う。この絵だが、色は何色かな? 君:一言で答えると、多色。 私:ご名答。大部分を占める白い部分がぐるっと外側を取り囲む。これが新皮質 Neocortex。その内側にあるのが水色と薄水色の皮質で古皮質 Archicortex。黄色い部分は旧皮質 Allocortex。真ん中で大きく占める黒い部分は脳梁といって左右の大脳半球をつなぐ神経の束 Corpus Callosum。中央の白くてまん丸なのが視床 Thalamus。蛇足だが、文字はラテン語とドイツ語だ。 君:記憶、つまり知性の座は新皮質にあるのね。 私:いや、そうではない。記憶は★短期記憶 RAM か、★知性 ROM か、という事で二つに分かれるんだ。この辺りはパソコンと全く同じ。RAM は海馬 Hippocampus にあり、 ROM は新皮質にある。新皮質は、言わば、ハードディスクである。パソコンの電源を切ると RAM 情報は残らない。海馬の機能がまさにそれ。旧皮質と視床はパソコンの基盤とか電源トランスくらいに思ってくれたらいいよ。 君:人類は巨大な新皮質を持ったという事で、他の動物に比しても大容量ハードディスクといったところね。 私:なんだ、わかっているじゃないか。また、言語を持つのが人類の特権。言語はこれまた各種の知性の根幹なんだ。つまり多層階の建物の一階部分だ。さて痴呆は、ぶっちゃけ、脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆に分かれる。前者はパソコンで言うバッドセクターのトラブルで、特定の記憶が突然に失われる現象。ハードディスクと同じで、つまり新皮質の部分的なトラブル。いい部分は問題なく使える。その一方、アルツハイマー型は何年も過ぎたフロッピーディスクが段々と読み取れなくなるような現象で、新皮質全体の機能不全。つまり、飛騨方言も、古典文法も、医学知識もなにもかも新皮質に書き込まれている記憶の一種なんだが、最近、僕の新皮質に困った現象が生じつつある。 君:どういう事? 私:記憶には、これまた二種類あって、強固な記憶と、あやふやな記憶に分類される。当サイトの記事は四千ページ近いが、どこに何を書いたか、瞬時には思い出せなくなっている。 君:誰だってそうよ。古い記憶は段々と薄れていく、いずれ消滅する新皮質の知性。その運命は海馬と同じね。 私:でもご心配なく。記憶を強固にする有効な方法がたったひとつある。 君:重要性を認識して、記憶を反復する事ね。それくらいは誰でもわかるわよ。特に楽しかった思い出は。 私:そう。大事な人から言われた一言なんて、一生、忘れられるものではないな。 君:誰だってそうよ。私も思い出しては反芻しているわ。ほほほ 私:嫌なことはさっさと忘れよう。当サイトに関してはハードディスク内の全文検索を恒常的に施行しつつ、あやふやな記憶を減らす努力を重ねている。ありがたいことに方言学の知識は着実に増加しているが、全面的な書き換えを余儀なくされた事は無い。ところで、僕ってロマンチストなんだ。海馬と言えば世界一有名な患者様がいらっしゃる。 Henry Gustav Molaison。何冊かの本になっている。Permanent Present Tense: The Unforgettable Life of the Amnesic Patient, by Suzanne Corkin (Author)。表題の意味、分かるよね。 君:? 私:Permanent Present Tense を意訳するとこうなる。例えば、君に何回、再会しても、いつも僕がいう言葉は、「やあ、はじめまして。えっ、高校の後輩でいらっしゃいましたか。奇遇ですね。若しかして以前、どこかでお逢いしましたか?」。つまりは再会の事実(短期記憶)が前頭葉に刷り込まれず、常に過去の記憶だけを基に会話をしなくちゃいけなくなるんだ。 君:でもそれじゃあ、ストーカーに成れっこないわね。ある意味、健全ね。でも Henry Gustav Molaison の伝記は悲しすぎるわ。 |
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