大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

英単語使用が過激化の一途をたどる国語論文

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私:国語学会あらため日本語学会に名前が変更された事を最近、知ったよ。
君:ほほほ、驚いたのね。
私:如何に国際化の時代でもねえ。どうかと思うな。いまだに学会内では根強い反対論がくすぶっているらしい。そりゃそうだろうな。
君:外国人に対する日本語教育とか、言語学的立場だと日本語という言葉は受け入れやすいわね。外国から見た場合はむしろ「日本語」が「国語」よりも自然。イギリスの国語が英国語、米国の国語は米国語、だから国語が日本語より常に使いやすいとは限らないわ。
私:先程は大慌てで、教育基本法とか、文部省サイトを閲覧した。「国語」という言葉は健在だった。日本の文化・伝統に溶け込んでいる言葉だから、これを「日本語」に置き換えたら滑稽な感じがする。そこでひとつ気付いたことがある。
君:とは。
私:日本語学会の会員の所属の内訳。全員が大学、しかも大半が文学部、一部は言語を扱う工学部、に籍を置く人達でしょう。国語学・言語学の研究を専門とす集団。高校国語教員には無縁の世界なのだろう。
君:教員は出来上がったものの教育を研究するのよ。
私:だろうね。前置きはさておき、本題に入ろう。
君:日本語論文にも必ず英語の抄録が必要であるようなご時世で、気付いたというか、感じた事があるのよね。
私:その通り。十年以上、昔になるが、方言の論説に「アスペクト」「テンス」の用語が出てきた時はびっくりした。
君:1980年代あたりかしら。
私:なにせ敵性言語だからね。戦前の山田文法や時枝文法にはカタカナ外来語は出てこないだろう。孝雄さんも誠記さんも、これを知ったらびっくりするぜ。
君:読んだの?
私:国語学言論は読んだ。感想を一言、実は簡単な事を極めて難解にお書きになった。その発想はAIによる日本語解析に通ずるものがあるので、時枝先生はコンピュータ・プログラミングの先駆者だな。日本におけるチョムスキーといったところか。山田文法は今日から勉強を始めたところ。学会名を変更して英語抄録をつけたり、そんな事してもしかたないと思う。僕としては国語学あらため、国学に戻ってほしい。本居宣長、最高。
君:でもあなた、既にアスペクト・テンスの言葉をこのサイトで自由に使いこなしているわよ。
私:その通り。つまりは、毒されてしまった、って事だな。この言葉を見た当初はビックリして嫌悪感すら覚えたのに。
君:ほほほ、今日は第二弾ね。
私:その通り。エビデンシャリティとミラティビティだ。
君:綴りくらいはお示しになったら。
私:そうだね evidentiality and mirativity。
君:最近はエビデンスはすっかり日本語になっているわよ。国語としては証拠という立派な言葉があるのに。しかも英語のアクセントと異なって平板アクセントで発音するのが主流になってきているわね。
私:エビデンシャリティとは畢竟、証拠性という日本語の事である。ぶふっ
君:つまりは。
私:話し手が何を論拠・証拠として文章を組み立てているか、を論理構築する事だそうな。
君:文脈という事かしら。
私:ああ、何とでもいえる。結びつきとかね。カタカナでそんな事を議論して何になる。嗚呼
君:ミラティビティは聞いた事がないわね。
私:「※ティビティ」という音韻でなにか他のカタカナ語を思い出せないかい。
君:アクティビティね。活動性。
私:そう。最近は創造性と言わないでクリエイティビティという輩がいる。
君:つまりは語根「ミラ」+接尾語「性」なのね。
私:そんなところ。感動性とか意外性の事らしい。手元にウェブスター・カレッジ版の第二版、千七百頁、があるが mirativity は収載されていない。
君:どういう事。
私:つまりは最近の造語なんだよ。DeLancey, Scott (1997). "Mirativity: The grammatical marking of unexpected information". Linguistic Typology. 1: 33?52 ここからミラティビティの世界が始まった。
君:綴りというか、語源が分からないわ。
私:別にわかる必要もない。要は彼がかってに考えた言葉。それを安易に日本語の世界に導入した学者さんがいる。どういう人たちかわかるよね。要は英語と国語をかじっている人。mira はどうも miracle からとったようだね。 miracle の語源はラテン語 mirus mirare miraculum から来ている。古代フランス語から古代の英語、そして現代英語に。 -tive のほうだが、文法の格という意味だ。 nominative, accusative, dative, etc. だからその造語として mirativity という発想なんだろう。でも大学受験英語で admire (vi) って動詞があるよね。この言葉の形容詞及びその名詞形は admirable / admirability admiral / admiralty つまりは僕が言いたいのは、どうせなら高三受験生でも知っているまともな英語を使った造語にして欲しい。だから強いて言えば mirability or miralty だ。これだって、こんなへんてこりんな英語があるわけないじゃん、という事で嫌悪感を覚えるが。
君:ミラティビティあらためミラビリティないしミラルティなら少しは納得しますけど、というお気持ちなのね。
私:要はそういう事。へんてこりんな英語を DeLancey 先生がお作りになった。そして世界の言語学者、あまつさえ日本の国語学者さえこの言葉に毒されている。お願いだ、変なカタカナ語を国語の世界に持ち込む事はやめてくれ。日本語の事は日本語で。否、和語は国学に基づいて語るべし。
君:今やジャパニーズ学会のセンチュリー、グローバルでボーダレスワールドなのよ。ロンリー左七。ほほほ

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