大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

最小語条件 minimality constraint(2)

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私:興味というものは人様々で、私が言語学の用語「最小語条件」に興味があっても、そうでないお方も多いだろうね。今夜はまたこの話題でゴメンネ。
君:いまさらね。
私:定義としては、音韻よりも大きくて、文節よりは小さいもので言葉としては最小に近いパーツ、と言うような意味だ。日本語はモーラ語なので、二モーラが日本語の最小語条件。最小語制約とも言うらしい。英語ではシラブルがそれに相当するが、2モーラとは子音+母音が二回という意味。英語のシラブルは子音+母音の一回、あるいは子音+母音+子音の一回、なので、日本語と英語では最小語条件は異なる。また、そもそもフランス語のように最小語条件がない言語もある。ところがフランス語の母語たるラテン語はモーラ語だが、学生時代に解剖学でラテン語を九千個ほど覚えた経験を踏まえて申し上げると、最小語条件があり、どちらかと言うと英語に近い。
君:長い言葉も最小語条件を基に理解すればいいのよね。
私:その通り。胸鎖乳突筋だが Musculus Sternocleidomastoideus。シラブルは Mus/cul/us Ster/no/clei/do/mas/toi/de/us にて us が付く名詞なので単数形男性名詞。ちょっと脱線した。今夜は英語の学術語について。実はこれが様々。先ほどネット検索していて気づいた。
君:そんなのどこかの英語の言語学の本に書かれている事でしょ。
私:まあそういいなさんな。まずは the minimality condition in phonology という言葉。
君:the minimality は the minimal である状態という意味、つまりは形容詞から名詞への品詞の転成。condition は状態、条件の意味。
私:その通り。つまりは重畳語なんだよ。そこで出てくるのがなにか、分かるよね。
君:ほほほ、簡単。the minimality。 つまり condition は無くても可能。
私:続いては minimal word constrant。これはどう思う?
君:ひっかけ問題ね。 minimal word ではなくて、 word constrant が minimal である事。
私:その通り。ハイフンを使う手もある。minimal word-constrant。ただしスマートではないね。普通は長い修飾名詞句を作るために用いられる。例えば the state-of-the-art technology とか。どきっとするような論文もあった。Bimoraic Word Minimality Condition in Chitonga, SKY Journal of Linguistics 22 (2009), 277─285。世界には日本語と同じく二モーラが最小語の言語がある。チトンガ語がどこの国の言葉かよく知らないが。
君:印欧語族でも二モーラが最小語の国があるわよ。フィンランドとか。
私:言語学者の数だけ言葉がある、ってな感じだな。例えば markedness constraint, prosodic minimality, prosodic morphology, prosodic phonology, grammaticality in Japanese clipping, minimality assumption, prosodic morphology: constraint interaction and satisfaction, linearization and the architecture of grammar, minimal link condition,等々。切りがない。要はこれらは皆、ある一つの理論から来ている。
君:うーむ、言語学の根本命題ね。
私:その通り。チョムスキー理論。生成文法だ。
君:化学方程式のような図が出てくる、あれね。
私:そう、あれです。言語をコンピュータで解析しようとする、あれです。こんな動画もある。native magnet theory だな。

君:ひと言で言えばどういう事。
私:要は最小語とは聞こえの最小単位。最小単位の意味が理解出来て、赤ちゃんは話し始める。
君:うーん、方言学では口よりも耳が大切という事のようね。例え話せなくても、何と発音したのか正確に認知する事、その前提条件が最小語ね。

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