大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

キメラ活用

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私:繰り返し述べてきているが当サイトは言葉を対象とするエンタメ系。
君:ここは形容動詞のコーナー。キメラ活用なんて言葉はないわよ。
私:あるわけがない。つい先ほど、僕が勝手に考えた言葉。
君:キメラって生物学の言葉じゃなかったかしら。
私:その通り。ヒントはDNA。
君:つまり遺伝に関係した概念という事ね。
私:まさにその通り。キメラとは、一つの個体に二種類の遺伝子セットがある状態なんだが、そのセットの在り方が問題なんだ。
君:待って。個体は父の遺伝子と母の遺伝子を均等に受け継ぐから、すべての個体は二種類の遺伝子セットから成るのじゃないかしら。
私:残念ながらその考え方は間違っている。わかりやすい例えで行こう。絵具の赤と白をよく混ぜたら何色になる?
君:桃色よ。
私:その通り。父が白、母が赤、生まれた子は桃色と考えるとわかりやすい。キーワードは減数分裂。父、母、子、この三人に共通するのは個体は一色という事。この理屈を遺伝学に当てはめる事ができる。ヒトの細胞数は37兆個だが、実は遺伝子は37兆個の細胞で全く同じ。
君:でもどうして同じ遺伝子で、脳になったり、口になったり、さまざまな細胞に分化するのかしら。
私:それは遺伝子発現の機能。一部の遺伝子が働いてAの細胞になるし、別の遺伝子が働けばBの細胞になる。遺伝子発現は37兆個のひとつひとつの細胞で全部違う。これを遺伝子のモザイクという。それと家族であるにもかかわらず三人とも全く別の遺伝子セットという事。生物多様性ともいう。
君:相当に脱線しているわね。形容動詞の活用が遺伝学でいうところのキメラであるとの説明を簡単にお願いね。
私:はいはい。赤と白を足して桃色の子供になるのは、たったひとつの赤卵子とたったひとつの白精子が合体したったひとつの桃色受精卵ができるから。同じ遺伝情報を持った細胞がひたすら37兆回、分裂を繰り返す。キメラというのは、この受精初期に減数分裂せず、つまり桃色にならず、ひとつは甲の系統の遺伝子細胞として37兆個の半分の回数だけ分裂し、もうひとつは乙の系統の遺伝子細胞もおなじ事をして、甲の細胞が半分と乙の細胞が半分の一つの個体ができる事。
君:甲と乙、どちらかが母由来遺伝子で片方は父由来遺伝子という事かしら。
私:それは絶対にありえない。キメラは実験動物学の問題、あるいは医学においては免疫寛容を利用した移植医療。移植医療の目的は患者様にキメラ人間として生き延びていただく事だ。紙面には限りがある。興味あるお方は自習でどうぞ。ご存じ、文語では父母たる二種類の活用、形動ナリと形動タリ、がある。ところがその子供たる口語形容動詞活用は一種類のみ。中学校で暗記した「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら」。これは受精により生まれた子供というよりは形動ナリと形動タリのキメラなんだよ。
君:ほほほ、そんな事だろうと思ったわよ。安直な言葉ね。
私:形動ナリは「なら・なり・に・なる・なれ・なれ」。形動タリは「たら・たり・と・たる・たれ・たれ」。つまり口語形容動詞は未然と終止が形動タリ遺伝子、連体と仮定が形動ナリ遺伝子、連用形に至っては更にキメラ状態だ。
君:なるほどね。
私:若しキメラにならないと、俄然、どこかの方言っぽく聞こえちゃうんだよ。「だろ・だっ・で・でぃ・だ・だ・だら」、こりゃ関東系で決まりだな。「なろ・なっ・ね・に・な・な・なら」、これってなんだか畿内方言っぽいね。
君:畿内というより、案外、奈良方言っぽいかもしれないわよ。ほほほ

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