大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

形容詞の語尾

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私:形容詞の歴史というと、やはり奈良時代?あをによし。中学生の時は完全に誤解していた。
君:どのように?
私:枝豆はビールに良し。奈良時代に「アオ青」という名前の名馬がいたのかと勘違いしていた。
君:なるほど。「あをに青丹」は青黒い土、磐緑青という顔料ね。奈良国内(くぬち)という土地で算出した事から、奈良にかかる枕詞という意味。それだけの事だわね。
私:当時の枕詞には他に、あさもよし、玉藻よし、などもあった。形ク「よし」については、動詞連用形について、その動作をすることが容易である、しやすい、気分よくやれる、勝手がいい、などの意を添えて形容詞として萬葉集に幾つか歌がある。
君:奈良時代に和語形容詞というものが出そろっているわね。記紀・万葉などの膨大な漢字資料があったから。
私:上代特殊仮名遣いの解明で、それら形容詞のアクセントすら解明されたそうだ。第一類、赤し・厚し・甘し・荒し・薄し・重し・遠し、等。第二類、白し・暑し・黒し・寒し・高し・強し・早し、等。数百。大半が現代語として生きている。多少の意味の変遷はあるが。
君:品詞ごとに和語がどの程度あるか、という研究によると、形容詞に限っては和語の割合がほとんど、という事なのよ。その点、名詞などは和語が極端に少なく、圧倒的に多いのが外来語ね。動詞はその中間。
私:兎に角、ボキャ貧というか、形容詞は古くからあったが数が少なすぎて使い勝手が悪い。という事で特に平安あたりから爆発的に増えたのが形動ナリ・タリだったかな。
君:でも押されて消滅したわけではなく、ほぼ全てが生き延びているどこころか、少しずつ増えて来たのよね。
私:そう。増えて来た。奈良時代に「かたし」があったけれど、「やわらかし」が江戸時代から、というのにはびっくりした。実はそれまでは「やわらかなり」と言っていた。消滅した和語形容詞もある。「やわし飢」。あるいはミ語法、已然形「け」とか。
君:語尾「し」の語源に肉薄していないわよ。
私:たかだか一語だからね。更には「み」「け」と言われても。要は品詞的解釈としては副助詞、接続助詞、終助詞的なものであった「し」という音韻。そして文法機能的には順接条件的に用いられてきた用言の語尾。これが日本語の形容詞の歴史という事だね。畢竟、指示語「し」と考えれば、当たらずと言えども遠からず。
君:そして、近世語としては突然に「い」になって現代語に至るのよね。然が意になったような感じね。ほほほ

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