大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
〜が欲しい・〜を欲しい |
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私:表題だが、どう思いますか。 君:「が欲しい」は正しく、「を欲しい」は誤用。 私:うん。学校文法、中等文法ではそのように教えているようだ。今夜はその辺を考えてみよう。「を」に上接するのは体言ないし連体詞、これは異論がない。そして「を」は目的格の格助詞なので動詞にしか下接せず、形容詞には下接しない、という事でいいのかな。 君:いいえ、それは違うわ。動詞に有って形容詞に無いもの、それはヴォイス、やりもらい、アスペクト、対人的なムード、といわれる文法カテゴリー。形容詞も格支配はあるでしょ。慣用的ではないので間違い、と言っただけ。意味は通るし、これに赤ペンを入れるのは躊躇するわね。 私:そうだね。のどが渇いて「水を下さい」と依頼する時、「ジュースがありますよ」と言われても、「いいえ、水を欲しい」と言っていけなくもない。「水が欲しい」に関しては何ら問題ない。 君:なんだか迫力が無い議論ね。 私:萬葉集にある発見。 君:とは? 私:紫のにほへる妹(いも)を憎くあらば人妻ゆゑに我(あれ)恋ひめやも(21)。 君:誰の歌? 私:額田王(ぬかたのおほきみ)の歌(20)に対する皇太子(ひつぎのみこ)が答えた歌。 君:紫草のように臭う貴方《を》憎いと思ったら人妻と知りながら恋をしましょうか。 私:つまり、上古の時代から格助詞「を」は情意形容詞に接続可能のようだ。従って「を欲しい」は誤用と教える学校文法は如何なものかな。 君:教師には教師の立場がある、という事ね。 私:それは兎も角、歌意は不倫礼賛という事ではなく既婚女性に対する最大限の誉め言葉だな。それにこんなのもある。犬猫を欲しい人へ 京都府山城広域振興局。 君:京言葉としては合格という事のようね。アンチ東京。それに萬葉集のお墨付き。ほほほ |
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