大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

状名詞・形容名詞

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私:今日は表題について。二、三の成書にあたったが記載があった。要は名詞の一部には形容詞語幹になるものがある。
君:渡辺実「国語構文論」ね。
私:塙書房, 1971.9。戦後、というか昭和の学説。「静か」という単語は「静かだ」という形容動詞になる。
君:戦前の文法論には形容動詞を認めない、という立場もあるわ。山田、時枝。
私:「静かな湖畔」の森の陰から、という事で、これはどう考えても機能的には形容詞。というか、構文論的には形容詞。そういう事を渡辺実先生は仰りたかったのでしょう。
君:形容動詞語幹は全て状名詞ね。
私:そう。安価、高貴、かさかさ、急激、等々。これらに「な」を付加すると形容詞の働きを持つので、外国人に日本語を教えるという立場から、これを「ナ形容詞」と呼び、従来というか本来の狭義の形容詞を「イ形容詞」と呼ぶこともあるね。イ形容詞にはシク活用も含まれる。
君:外国人にわかり易いという事は小学生にもわかり易いという事よね。初等中等教育でも用いていけない事も無いわね。
私:大学生、というか高等教育では駄目だろうね。ところで、これって英文法から来た言葉じゃないのか。
君:というと。
私:動詞的名詞 verv noun の概念がある。英語では動詞と名詞が同じものが多いのが特徴。例えば mark, target, name。類型としては to + verb, あるいは現在進行形が名詞になる。現在進行形の正式名称は動詞状名詞 gerund 。Gerunds are words that are formed with verbs but act as nouns. They’re very easy to spot, since every gerund is a verb with ing tacked to its tail. There are no exceptions to this rule.
君:なるほど、これが元ネタというわけね。
私:「国語構文論」状名詞は形容詞状名詞とでも呼ぶべきものだね。そして「ing」と同等の働きをするものが「ナ」。「ナ」の正体は何か。これは格助詞でしょう。体言を体言に接続して連体修飾を表す。
君:つまりは「の」と同じね。
私:そう。流石に「静かの湖畔」とは言わないが、「静寂の湖」とか、「死の淵」とか。「の」が「な」になった。古事記に既にある。渡辺実「国語構文論」に続くのが日本文法:全[草野清民著(1901)](日本語文法研究書大成/北原保雄,古田東朔編)勉誠社, 1995.10。ここでは「形容名詞」なる学術語を提唱。
君:学者の数だけ文法がある、という意味ね。
私:そこが文法のいいところなんだよ。
君:あら、いやだわ。状名詞・形容名詞ね。ほほほ

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