大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

開田方言 http://www.zoone.com

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私:ずんね空間というサイトがある。開設時期が当サイトより古く、当サイト開設時期の2005年辺りに何度か閲覧していたのではと思う。こうやって今尚、資料を御残しになっているのはありがたい。飛騨方言の理解のためにもなくてはならないサイトだ。
君:開田高原って長野県よね。全国の皆様はあまりご存じないわよ。
私:まずはその辺りの説明からだね。高原は御岳の東の裾野であり、飛騨の国と木曽福島との中間にある。アクセスは高山市からも木曽福島からも国道361号が唯一の手段。岐阜・長野県境は長峰峠。長峰峠を北上すれば高山市になるし、日和田高原からは小坂・下呂への道もある。
君:地勢的には険しいところかしらね。飛騨山脈の大方言境界線が日本の方言を真っ二つに分けているのだから。
私:それがそうでもなく大方言境界線といっても飛騨山脈の北部分、つまりは穂高連邦・立山あたりの事だね。なにせ明治までは未踏の山々で地図すらなかったようなところなので。ところが長峰峠辺りはそれほど地形は険しくない。長峰峠、野麦峠辺りは真冬でも人の行き来があったくらいだ。歩荷さ(ぼっかさ)という職業があって、背中に重い荷物を背負って雪道を黙々と歩く。越中氷見(ひみ)の寒ブリは飛騨経由で信州にもたらされた。従って国道361号は別名がブリ街道という。飛騨高山と江戸を結ぶ大事な道でもあり、江戸街道の名前でも親しまれている。伊能忠敬もテクテクと歩いて測量をした道だ。戦前は飛騨も開田高原も馬の飼育が盛んだったという経済共通性も見逃せない。
君:つまりは飛騨方言と開田方言はお隣同士の地形で、方言学的にもかなり似通っているのね。
私:ああ、勿論。うりふたつと言ってもいいかな。早速に実例をお示ししよう。「ずんね」。冒頭で紹介したサイト名でもあるが、「ゆっくりと」の説明があるね。これは飛騨方言でも使うね。
君:あなたなら語源はピンと来るわよね。
私:ああ、勿論。「じゅんに順」が訛った言葉だね。「急がす焦らずひとつずつ順番に」という意味で「どうぞごゆっくりと」という意味になるんだ。「コロナの対策は一筋縄ではいかんぞ。希望を持ってずんねやらにゃだちかん」などと言えば、飛騨でも開田でも立派に通じると思うね。
君:なるほどね。でも、たったひとつの言葉くらいじゃ駄目よ。
私:では、もうひとつ。サイトをやぶにらみして「〜してくりょよ。」という言い方を発見した。「〜してください」という意味だ。これも飛騨方言と共通の言い方だ。男女とも用いる。なんでこんな音韻になったのだろう、という疑問も少し考えてみれば簡単にわかるよね。
君:「〜してくりょ」って「〜してくれよ」の意味なのよね。
私:正解だ。つまりは「〜してくれよよ。」の短呼化だが「くれる」の命令形「くれよ」+念押しの終助詞「よ」という事だ。念押しと言えば共通語でも「これ、おいしいよ。遠慮せずに食べろよ。」などと言うね。アクセントだが命令形「くれ\よ」なので「くりょ\よ」になる。
君:なるほどね。
私:既にお亡くなりになって久しいが生まれも育ちも開田という老婦人を長らく診させていただいていた事もある。たっぷりと開田方言を聞かせていただいたが、飛騨方言との違いは感じられなかった。生まれ育ちが開田で、小学生で私の町内に引っ越ししてきて、中学三年間、ずうっとクラスメートだった子がいる。彼女は方言の事で開田の生まれである事にコンプレックスを感じる事はなかっただろう。
君:開田というくらいだから、結構、ただっ広いのね。
私:ああ、春夏秋の二輪ツーリングは魅力的だね。冬は雪の事があるので近づかないほうがいい。
君:開田の冬はスキーね。

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