大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 音声学 |
cardinal vowel |
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私: cardinal vowel のお話をしよう。 君:それって英語のお話という意味?ここは国語学の場よ。 私:いやいや、これは純粋に国語のお話だ。或いは方言学のお話といってもいい。 cardinal の品詞は形容詞、中学生でもわかる。 君:適当な日本語訳がないだけ、という意味ね。 私:その通り。cardinal number vs ordinal number という整数論の問題ではない。 君:重要な、という意味の形容詞だわね。 私:その通り。・・ Of main importance, principal, or chief. For example, "a cardinal principle" or "of cardinal significance". Synonyms of cardinal include essential, fundamental, and vital. 君:つまりは重要な母音、という意味ね。 私:ここは音声学 phonetics の場だから、その方面から早速に始めよう。日本語の母音の数は? 君:五個ね。 私:違う。八個だ。共通語は五個、尾張方言は八個で一番に多い。方言量と同じ概念で、一体全体、ある言語には、というか世界の言語には幾つの母音が有るのだろう。どの母音も大事、大事でない母音など無い。つまりは世界に言語多しと言えども代表的な母音というものは18個に集約されるのでは、と説いた学者がいた。Daniel Jones、英国人で音声学の祖。 君:IPA に出てくる図ね。 私:その通り。特に重要な8つを primary vowel 、そうでない10個を secondary vowel と名付けた。 君:英語では日本語の/ア/に相当する母音でも cat cup など、幾つもあるわね。 私:いやいや、英語を基に分類されているのではないんだ。重要なのは舌の形、この舌の形で母音は千変万化で、世界の諸言語には40とも、50とも、とにかく沢山の母音がある事が知られているが、特徴的なというか、代表的というか、明らかに弁別できる母音で然も舌の形が特徴的という意味で cardinal vowel。 君:細かい事を言えば切りがないのね。 私:細かい事を言えば人の数だけ母音があるという事になるが、このアナログデータなる母音というものを記号化すると、日本語の共通語の場合はアイウエオの五個に帰結し、これで事足りる。要は世界各国の母音を表記すると cardinal vowel に帰結し、それは IPA 記号にて記載が可能。 君:微妙な聞こえの差に対する言葉の意識というものが大切ね。何も意識しなければ5個に帰結するのね。 私:うーん、どうかな。日本語の場合、沖縄与那国方言が最も母音が少なくて/a/・/i/・/u/、つまり/エオ/が無いと言われているが。微妙な母音というものが与那国方言には無いのだろうか。 君:飛騨方言はどうなの。 私:僕は生まれ育ちが飛騨だから、飛騨方言の母音の解析は返って難しいね。多分、共通語と同じで5個だとは思うけど。学生時代に裏日本を自転車で旅して、その地方の古老の方々がおっしゃる言葉がモゴモゴといった感じで、母音すら聞き取れなかった事にショックを受けた。 君:貴重な体験ね。日本語ですら cardinal vowel は定まらず、といったところかしらね。 ほほほ |
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