大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言には存在しない音韻

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以下の音韻ですが、飛騨方言としては決して存在しない音韻です。 飛騨方言としては極めて異質であり、実際は以下の音韻があると飛騨方言ではないと極論できましょう。

飛騨方言には決して存在しない連母音の融合
おしえ→おせぇ
oshie oshee
ここへ→こけぇ
kokoe kokee
語頭、語中、語尾の母音の無声化
母音を明瞭に発音する飛騨方言では、用いられません。 (例 いやだ→やだ、ちがいます→ちがいまっ)
共通語同様に飛騨方言には存在しない音
アァー、イァー、ウァー、エァー、オァー
アィー、イィー、ウィー、エィー、オィー 
アゥー、イゥー、ウゥー、エゥー、オゥー
アェー、イェー、ウェー、エェー、オェー
アォー、イォー、ウォー、エォー、オォー
語頭の合拗音「くゎ・ぐゎ」
国立国語研究所編日本言語地図によると御岳山麓、朝日町高根あたりにかつて存在したようです。
四つ仮名の区別(ジ/ヂ/ズ/ヅ)及び
三つ仮名(ジ・ヂ/ズ/ヅ)、
一つ仮名(ジ・ヂ・ズ・ヅ)
軟口蓋摩擦音(フ・ホゥ)
飛騨方言には存在しません。 飛騨方言では四つ仮名は破擦音(「ち・つ」の濁ったもの)で発音されます。 軟口蓋摩擦音は京言葉に特徴的で「す」で終わる助動詞に助詞が後続した場合に のみ摩擦音(「し・す」の濁ったもの)として発音される現れる音です。 たとえば「どすな」は「どフな」、「どすか」は「どフか」に聞こえます。
開合の区別
共通語のオーに相当する語は実は歴史的仮名遣いのアウ・アフに 由来するものと、エウ・エフ・オウ・オフ・オホに由来するものがあります。 中世末までの中央語・京都語では、オーは広い・狭い、つまり開音・合音で 区別されていたらしいのです。これを開合の区別といいます。 山陰地方に特有の音韻ですが、飛騨方言には存在しません。
語頭及び非語頭のガ行子音
国立国語研究所編日本言語地図によると、入りわたり鼻音、例 籠−>kango、のような発音が わずかに確認されているらしいのですが。
ザ行・だ行・ラ行の混同
飛騨方言には存在しないようです。 例 雑巾−>どーきん、撫でる−>なぜる、うどん−>うろん、蝋燭−>どーそく、 人力車−>りんりきしゃ、両方−>じょーほう、等々 全国各地にみられる
ti.tu.di.du の音
外来語、特にカタカナ語に用いられるこの音韻は実は室町時代中頃 まで中央語、つまり京都語、の発音だったのです。高知方言にあり、 例えば唇はクティビルです。共通語同様、飛騨方言には存在しません。
ザ行・ダ行・バ行の入りわたり鼻音
共通語同様、飛騨方言には存在しません。 例は膝をヒンザ、窓をマンド、等々、東北地方の方言に顕著であり、 日本語の古音の名残りと考えられています。
ハ行四段動詞のウ音便
飛騨方言では大半の動詞が促音便になるようです。

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