大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

同形異音語

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私:方言学を少し離れて、日本語の最大の特質といってもいい、同形異音語 homomorphic allophone についてつぶやこう。同表記異音語、同綴異音語(どうてつ・)、同字異音語、などとも言う。これの延長にあるのが同字異義異音熟語。
君:要は言葉遊びね。
私:圧倒的に漢字がらみが多いような感じだね。呉音、唐音、漢音が入り乱れて日本語に混ざっているから生ずる現象というステレオタイプな解釈。ところが日本語は実はそうではない。
君:えっ、どういう事?
私:野村雅昭という学者さんが1945字の常用漢字をお調べになった。音読みがひとつだけの漢字が 34.1%、音読み一つ訓読み一つの漢字が 32.5%、音読み一つ訓読み二つの漢字が 11.7%、と続く。
君:なるほど、訓読みそのものが同形異音語、つまりは古代語そのものが同形異音語というわけね。
私:金「かな・かね」とかね。但し、近世語にだって例はある。
君:ほほほ、例とは?
私:形クよし良。これが近世語で「よい」になった途端に「ええ」「いい」が生まれてしまった。ええじゃないか、とか、日本史で習ったでしょ。江戸語といえば、いい男・いい女。ところで「ええ」「いい」、この二つは、「よい」と決定的に違う文法上の特質がある。
君:ほほほ、そんなの簡単よ。「ええ」「いい」は終止形と連体形しか存在しないわ。現代語でも、よかれと思って、よくない話、とか、相変わらず「よい」は使うわね。
私:そうなんだよ。呉音、唐音、漢音のみを考えるのは大いなる幻想、同形異音語は訓読みの特質そのものだ。うーん、例えば、栄子はいい子が東京式で、栄子はええ子は大阪式かな。
君:良い子の方言教室、という事で、文頭は「よい」が自然に出てくるわね。
私:でも、いい子してるんだよ(東京)・ええ子しとるんやで(大阪)とか。
君:あら、それ文頭じゃないわよ。主語が抜けているわ。文頭に「栄子ちゃんは」を持ってこなくちゃ。 ほほほ

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