大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents

地元荘川の飲食店へ突撃取材!(飛騨高山)#3

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私:方言の勉強は、聞いてなんぼ・話してなんぼの世界。今夜は飛騨方言の実践編といこう。

君:荘川は白川郷の上流につき裏日本、分水嶺を超せば郡上。高山市の西に数十キロに位置するわね。行政区分は高山市荘川町。
私:3:25 からの数秒の言葉だが「なんや、わりゃくわんにっ、きゅうにつけものくわんにってぃって。おりゃ食うよ、浅漬け。大好きやいな。」。
君:流石にここまで早口で話す人は飛騨では少ないわね。
私:その通り。パッと聞いて、聞き取れなくて、実は何度かプレイバックした。
君:ほほほ、あなたが聞き取れない飛騨方言を飛騨以外の人達が瞬時に理解するのは不可能だわね。まずは共通語に訳してみてね。
私:うん。「なんだい、あなたは食べないっ、急に、漬け物は食べないっていうとは。俺は食うよ、浅漬け。大好きなんだよ。」
君:文法的な事を順に説明してね。
私:★なんや、は、なんじゃ。★わりゃ、は、われ(我)は、の音韻変化で、あなたは。★くわんにっ、は、くわぬに、の撥音便。★きゅうに、は、急に。くわんにてぃって、は、食わぬにといって。★おりゃ、は、おれは。★大好きやいな、は、大好きじゃえな(念押し)。
君:まあ、いちいち逐語訳をしなくても、要は奥様があれこれ言い出したら、ご主人が『なんだい君は急に漬け物は食べないって言いだすとは。僕は食べるよ、浅漬け。大好きだもの。』と反駁なさったのよね。
私:そういう事だが、大事な点をひとつあげさせていただこう。「わり我(=あなた)」は自分より目下あるいは同等に対して用いる人称代名詞であり、夫が妻に用いる事はあるが、妻が夫に用いる事は絶対にない。飛騨方言の敬語体系は厳格で、妻は必ず夫に対して尊敬語「あんた」あたりを使うのが普通。
君:そうよね。そして「おり俺(=私)」についても飛騨方言では面白い点があるわよね。
私:そう。「おり俺(=私)」は謙譲語だ。そして男女とも使う。つまりは妻が夫に対して使う事もある。勿論、夫が妻に対して使う事もある。この場合の敬語の意識としては、謙譲語の意味ではなく男衆の言葉という意味。若い女性は「おり」を嫌って「わたし」と言うだろう。男が女に「わたし」という事は通常は無いね。
君:敬語体系は母と子供の関係ではどうかしら。
私:勿論、母が目上で子供は目下だから、子供が母に対して「わり」は完全にアウト。
君:つまりは「おり」は男女とも誰に対しても用いる事が出来るけれど、「わり」は目下に対してしか使えない、という敬語体系なのだわね。
私:その通り。わりも割とわかってるじゃないか。全国の皆様へ、これが世に言う畿内文法で東京アクセントの方言、飛騨方言でございます。
君:おりも折に触れて飛騨方言を懐かしんでいるのよ。ほほほ

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