大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents |
語尾に「さ〜」が多すぎる青森の女子大生 |
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私:まずは動画をご覧あれ。 君:これは今が流行りの「方言女子」ならぬ「方言男子」さんね。 私:その通り。本来ならば、当サイトにこのように紹介記事を書くよりも、あちらのサイトに感想を書けばいいのだろうが、成り行き上、ここに書いている。 君:貴方の講釈は長すぎるわ。要点を一言でお願いね。 私:うん。方言学のイロハ、京へ筑紫に坂東さ(きょうへつくしにばんどうさ)。室町時代の方言キャッチコピー。ロドリゲスの「日本大文典」や「実隆公記」などに記載されている。 君:要は方角を示す格助詞の全国での使い分けね。坂東の定義は? 私:坂東は文字通り坂の東側という意味。坂は天下の碓氷峠と足柄峠の事を示す。従って坂東は関東平野及び東北地方を示すんだよ。青森は板東の果てだ。蝦夷は外国。筑紫は九州。 君:関東では「サ」で、青森方言では長音化し「サー」という事なのね。 私:そのようだね。方言や特定分野の語の長音の表記には長音符号「ー」を使い、波型「〜」は使わない規則になっている。例「めんそーれー(いらっしゃい)」。だが、こんな事とて最近知った事だし、僕は学会にすら属していない。無名のアマチュアだ。 君:ほほほ、あなたには無名が一番にお似合いね。学問は誰のため、それは社会のためというよりは実は自分のため。朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり。ところで飛騨は上方方言の文法に従い方角の格助詞は「へ」だわね。 私:いや、そうでもない。「に」も使うね。「へ」より寧ろ「に」じゃないだろうか。「東京に行く」。「へ・に」のディープな議論はここでは割愛。 君:動画ではざっと三十近く「さ」を使っていらっしゃるけれど、主語を表す格助詞「さ」も目立つわね。「私さ東京さ行く」。 私:飛騨方言でも「さ」を連発するが、すべて終助詞「さ」だね。「そうなんやさ、そうやさ、そやさ、ちがうさ、おおきいさ、おおきいんやさ」 君:飛騨方言では格助詞に「さ」が用いられる事は無いわね。 私:ああ、絶対に無いというレベルだ。それでも接続助詞などでは使うかもね。「そんでさあ、こんなことになってまったんやさ」 君:あら、不自然よ。寧ろ「そんでなあ、こんなことに・・」だわよ。 私:そうだね。接続助詞でも不自然さを感ずるね。この辺が飛騨方言ネイティブか偽飛騨方言話者かの鑑別になるね。それとこの動画てはアクセントの観点が大変に気になる。 君:簡単にお願いね。「◯●▼」は使わないでね。 私:はいはい。この青森方言では「さー」全てにアクセントの核がある。このユーチューバーさんはデッドヒートして無意識にお話しなさっているから猶更、価値のある動画と言えるね。ところで世界の言語の中で日本語はピッチアクセントの言語だ。彼はピッチアクセントで正確に発音していらっしゃる。結論だか、こうなってくると青森方言「さー」は格助詞というよりは間投助詞と呼ぶべきだろう。極論としては挿入句と言ってもいい。他方では飛騨方言文末詞「さ」にはアクセント核は無い。全て下がり調子。しかも「さ」は用言終止形に接続するのみ。つまりはあっても無くても良い存在だ。語調を整える機能としての文末詞だね。まあいいか、微妙なアクセントの事など。最も重要な点は実は国文法にある。飛騨方言の終助詞「さ」は決して体言に接続しない事。ネバー。「何処へ行くの?」に対して「東京さ。」は飛騨方言としては完全にアウトで、飛騨方言として正しくは「東京やさ。」 君:飛騨では「東京さ。」と言ってしまうと東京かぶれのキザな男という事で、皆に嫌われてしまうわよね。 私:その通り。「受験はどこ?」に対して「東京さ。慶応に決まってるだろ。滑り止めってとこかな。」などとと言ってしまうとアウト、「東京やさ。慶応やけど記念の受験やさ。天は人の下に人を作るんやさ。おりの下に人はおらんかもしれんな。」の謙虚さとユーモアがあればセーフ。 君:昔は合否電報というのがあったのよね。 私:蛍雪時代の息抜きコーナーに文例がワンサカあったね。東京商船大なら「遭難、沈没」あたりが不合格文で「祝就航、ドラが鳴る」あたりが合格文。 君:なるほどね。 私:「イセエビ釣れた」は? 君:三重大合格。「イセエビ不漁」は御免よね。 私:じゃあ「兼六園の桜咲く」は? 君:金大合格。人生のはじまり。学問よ、こんにちは。 |
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