大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨方言 You Tube Contents

ムーンライト伝説【飛騨方言バージョン】

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私:テレビアニメ・美少女戦士セーラームーン1992/3/7-1994/3/12のオープニング曲。長女が小学生、次女が保育園だったので我が家のソウルミュージックだった。

君:歌詞で気になるところは。
私:要点を。
「今すぐ」が「デーレ」つまり「度えらい(とても)」だが、伝統的飛騨方言では「スント(すぐに)」・・世代による語彙の違い、デーレはギア(岐阜愛知)方言
「泣きたくなるよな」が「だしかんこぜてまう」、「だしかん」はらちあかぬ(だめだ)「こぜる」は抉る(こじる)・・俚言+「てまう」表現
「どうしよう」は「どもならん(どうにもならぬ)」・・全国共通方言
「ミラクル・ロマンス」が「奇跡の恋やにか(じゃないか)」・・新方言「やにか」
「ふたりで」が「つらって(連れ立って)」・・全国共通方言
「忘れない」が「わすれれん(忘れられぬ)」・・ら抜き、否定の助動詞「ない・ぬ」
「幾千万の」は「でーれぎょうさんの(度えらく仰山の)」・・ギア方言
「見つけられる」が「みつけれる」・・ら抜き
君:これ以上の説明は必要なさそうね。
私:新方言「やにか」については説明が必要だ。「奇跡の恋やにか」は奇跡の恋じゃないか、という意味で断定・主張の意味の方言文末詞だが、これは平成辺りから急に使われだした言葉のようだ。少なくとも昭和生まれの私の世代、つまりは戦前あたりの伝統的飛騨方言には存在しない。2004年、つまり平成初期に当サイトを開設、飛騨の若者が公開掲示板で発信する飛騨方言に当時から着目していたが、当時ですら無かったと記憶している。「や」は指定の助動詞「じゃ」で決まり、つまりは「ない」の二音韻が突然に「に」の一音韻に変化したと考え、「か」は詠嘆の終助詞で決まり、以上、「やにか」の品詞分解。
君:ナ行での連母音+短呼化「ない>にー>に」あるいは突然の母音「ア」の脱落という事よね。
私:そう、その通り。「に」一文字のほうが言いやすいし、意味も伝わるし、という事であっと言う間に広まったという事だろうね。
君:同じような音韻変化の文末詞がもうひとつあったでしょ。
私:その通り。「けな」。
君:「そうかいな!」という詠嘆・感動の意味で「そうけな!」と言うようになったのよね。
私:そう。これも、ここ十年か二十年の変化だね。言葉の変化が目まぐるしいのはSNSの影響があるだろうね。話し言葉を文字情報の段階で短呼化して発信し、それが相手の心に響くと、その文字情報が新方言になるのでは、という方程式。でも少し抵抗があるけれどね。
君:抵抗?
私:古典文法を学ぶ身の僕の言語感覚としては「にか」「にや」は疑問の意味。「に」は断定の助動詞ナリ連用形「に」。そして「か」が大問題。「か」は連用形接続の疑問・疑念の係助詞。つまりは古典文法では「にか」は疑問・疑念でしょ。詠嘆の終助詞「か」もあるが、この場合は連体形接続だよね。「なるか」ならば詠嘆でいいのかもしれないが、「にか」は疑問文「何事にかあらん」のニュアンス。ところが歌詞の「奇跡の恋やにか」は「奇跡の恋だわよ」の意味。
君:お若い方々が素直な気持ちで新方言をお使いなのだから、野暮な事は言わぬが花よ。老害だわ。
私:方言は古典文法を基にしていても、意味が逆転する事もある。だから面白い。ただそれだけ。確かにつまらない議論だ。以上は前置きだ。ムーンライト伝説の本論に入ろう。
君:えっ、以上が前置きなの?!やめてよ!
私:テレビの影響は絶大だ。ムーンライト伝説を期に世の中が劇的に変わった。
君:劇的に?
私:ヒントは校則違反。中高一貫私立校。
君:校則違反?・・わかったわ。女子生徒のスカートの丈。
私:その通り。ムーンライト伝説に感化されて全国の女子中学生が我も我もとスカートを短く切ってしまったという社会現象。我が子もご多分に漏れず。親は何度か学校の職員室に呼び出された。
君:女の子は皆、美少女戦士に憧れたのね。
私:似合う子もいれば似合わない子もいる。
君:問題は似合わない子ね。あなたのお嬢ちゃんはコスプレ女子中学生でさぞかし似合っていらっしゃったのでしょうね。ほほほ

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