大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路 |
津軽方言「け」の3つの意味 |
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私:津軽方言「け」は★かゆい(形ク)、★ください(命令)、★食え(命令形)の三通りの意味があるんだよ。 君:究極の短呼化だわね。会話の文脈で判断するしかないのね。 私:そうだ。★食え(命令形)の呼びかけに対しては「め」と答えれば「うまい」の意味になるそうだ。 君:山形の方言で有名なのがあったわね。 私:うん。「どさ何処?ゆさ湯然!」で「どこへおでかけですか?温泉ですよ!」の意味になる。 君:ビクトールユーゴーが出版社に出した世界一短い手紙も有名ね。 私:うん。一文字「?」に対し、出版社も「!」で返事した。「新作レミゼラブルの売り上げは好調ですか?」「びっくりするほど売れています!」の意味だ。 君:流石に飛騨方言ではこのような表現は存在しないわね。 私:そうだね。お別れの挨拶で「そしゃ」に対して「そしゃ」で答える。原意は「さうせばや仮然為」あたりだろう。「それでは」という意味になるが、「そしゃ」で返答すれば「はい、それでは」という意味になる。 君:音韻学に最小語条件というのがあるでしょ。 私:あるある。語形成によって作り出される語は最小1フットの長さを持つ(窪薗・太田, 1998)。ところが日本語は単モーラの単語を嫌うというのだね。5・7・5のリズムは実は6・8・6どころか本当は8(=2x4)・8・8。休拍があるからだ。京言葉がそうだが、「胃が痛い」というのを実際には「いーがいたい」という。血の事も「ちい」と言う。だから日本の多くの方言では「くえ」を更に短呼化するような事は普通は無い訳だ。青森方言とて「言え」が「え」になるような事は無いだろうね。 君:「いふ」だからハ行動詞だわよ。ア行じゃないのよ。 私:失礼。それに上古には「いふ」から「ゆふ」。わが恋は 今をかぎりと 夕(ゆふ)まぐれ をぎふく風の おとづれてゆく(新古今・恋4) 君:命令形「しろ」という意味で「せ」というのかしらね。室町は中央でも「せい」だから。 私:はい、ネット情報ありました。47都道府県の「いいかげんにしろ、殴るぞ」方言がこちらです 君:ほほほ、青森方言は「せ」なのね。 私:その通り。青森方言に最小語条件という言葉は無い。ぶふっ 君:となると「いたい痛」は「て」だわね。なにせ「かゆい痒」が「け」なのだから。 私:音韻対応しているのか、という問題だね。いかにもありそう。 君:でも案外、青森県民の皆様を御答えは「ね」かもしれないわよ。 私:なるほどね。「無い」つまり「違います」という意味か。 君:ん。 |
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