大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路 |
「を」の発音 |
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私:先ほどは愛媛県に特異な音韻があるという事を知って、びっくりしたんだよ。 君:表題からすると、ア行とワ行の問題ね。上古の音韻、上代特殊仮名遣いとも関係するわね。 私:国語学を専門としない読者の皆様へ、という事でお話を進めさせていただこう。 君:つまりは小学生でもわかる方言学。 私:おっ、それいいね。小学生というか、私事で恐縮だが、初孫が五歳なんだ。今、平仮名はスラスラと書けるようになった。何々を、という事で格助詞には「を」と表記して「お」と読ませる。そもそもが孫の当然の疑問は、どうして平仮名にはふたつのオがあるのか、という命題。それにどうして「あいうえお」以外に「わいうえを」があって、「いうえ」が重複しているのかと言う点も孫は大変に不思議がった。 君:ほほほ、左七のおじいちゃんはお孫さんにどうやって教えたのかしら。 私:昔々、日本が出来たころ、気の遠くなるほどの昔に奈良時代という時代があった。当時は「わいうえを」は「うぁ、うぃ、うぅ、うぇ、うぉ」と発音していたんだよ、と教える。 君:大昔は「オ」と「ウォ」の音韻だったので平仮名が出来た時に「お・を」と区別して書いたと教えればお孫さんは納得するわよね。 私:その通り。大昔は「ホンウォヨム」と発音していたので「本を読む」の表記にした、と説明したら孫は納得した。言語には音韻と表記に関して対応がある、という言語学の命題を孫は理解した。 君:愛媛県では現代でも「ホンウォヨム」と発音する人が多いのね。 私:驚異というしかないね。ワ行音は平安に仮名が出来た時にはア行との音韻の対立があり、ア行が消滅しワ行に統一、これが時代と共にあいまいになり、中世以降はワ行の音韻が消滅し、ア行の音韻が生き延びて現代に至る。ただし、表記だけは「を」を残しましょうという古語ノスタルジア。孫がもう少し大きくなったら藤原貞家や僧契沖のお話を聞かせようと思う。たかが伊呂波されど伊呂波、という訳だ。 君:簡単にいうと愛媛県には平安の音韻が残っているという事のようだけど、でも、それって本当なの? 私:君のような国語学の専門家でも当然の疑問だよね。実は愛媛大学の国語学者・佐藤栄作先生(香川出身)がお気づきになり、愛媛大学の学生を対象とした詳細なアンケート調査を2006−12年、つまり足掛け七年かけて行い判明した事実。「ウォ」の使用者が48.9%、「オ」の使用者は4%に満たなかった。 君:ワオ! 私:それを愛媛大生が言うと、若しかして「ウワオ!」。 君:ほほほ、それうぉ言いたかったのね。 |
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