大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム心の旅路

駆け足の岐阜県図書館

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佐七:ただ今、車の出張は疲れるな。ついでだが岐阜県図書館へ寄ったよ。
家内:お帰りなさい。お疲れ様。でも、のんびりとした出張だったのね、ほほほ。
佐七:そうじゃない。午後の会議と夜の会合、掛け持ちの出張だぜ。その合間さ。
家内:あら、そうだったの。図書館の玄関様とお見合いしたのね。
佐七:冗談好きになったね、君も。いや、なんとか三十分、時間があった。
家内:あらら、超濃密なデートだったようね。
佐七:午後の会議は一時間早く終わった。カーナビに電源を入れて所要距離を計算したら図書館まで数キロ、よしいけるぞ、と思った。
家内:やれやれ、お目当ては方言資料ね。
佐七:勿論だ。入るや否や秘書に聞いた、飛騨方言の資料を探している、と。一瞬、キョトンとされちまったよ。二階の郷土史コーナーへどうぞ、だった。
家内:あなたは二階へ走ったのね。そうっと。
佐七:そうさ。二階でまた秘書を捕まえた。質問を繰り返した。
家内:ふふっ、またお仲人様がキョトンですか。
佐七:まあね、とにかく時間がない。ここらあたりです、というコーナーに案内されたら、有難う・あとは自分で探します、と追っ払ったのさ。
家内:くくっ、変なおじさんに思われたわよ。
佐七:だろうね。残りはあと二十五分だ。実はたった一個の書架、そこに県下の方言資料、多くは単行本、があるのみ、という事に気づかされた。
若しや、と思ってその郷土史コーナーをぐるぐる回った。残りあと二十分。
家内:ほほほ、期待はずれだったのね。
佐七:まあね。書架の単行本は全てすでに所蔵しているか、目を通したか、という事で新資料は無かったよ。小冊子がいくつかあり、それをペラペラとめくった。
家内:ははは、持ち時間は既に半分経過しているわね。
佐七:そう。阪大の学生さんの白川郷のフィールドワークの冊子は目を通す事が出来たけれどね。会話を活字に起こしただけのものだった。おいおい。
家内:言葉にお気をつけなさいませ。若しかして真田先生もご覧だわ。
佐七:いや失礼、時間が無かったからね、斜め読みだ。せっかくだから郷土史コーナーで五分ほど時間を取る事にした。流石に県下の市町村全てについて揃っている。下呂町、古川町、久々野町、等々いくつかを手にとって見た。ひたすら目次を追ったが、うれしかったぞ、やはり方言の章がどの本にもあったねえ。
家内:そこも数分ずつ斜め読みなさったのね。
佐七:そうだ。あと十分しかない。ところがトイレに行きたくなった。
家内:前立腺なのよね。郷土史コーナーとは泣き別れなさったのね。
佐七:そうさ、 I shall return だよ。
家内:落ち、ね。
佐七:まあね。締めくくりは、玄関を出て巨大な建物を振り返り、ここには飛騨方言の単行本は数冊しかなかった、まさに滅び行く飛騨方言、こんな郷愁をいだくのは、佐七よ、お前だけか、とつぶやいてしまった事さ。男のロマン、わかるかい。
家内:岐阜県の人口が二百万人でしょ。飛騨の人口は十万そこそこ、少数民族だからしかたないのよ。それでも県図書館に数冊の飛騨方言の単行本があるだけでも立派だと思うわ。

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