大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路

やってんべ 伊香保温泉

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私:夫婦で旅行好きと言えばそうかもしれない。いつも旅行の計画の事ばかり話している。旅の準備も旅のうち。計画の十に一つが実行されるかどうか程度なんだけどね、ははは。今はコロナで今は自宅でひたすら忍の時代だ。早速に本題だが、表題の通り。
君:方言ではある事はわかるけど。意味は?
私:「やってんべ」というのは「やってみるべきだね」とか、「とりあえず、やってみようよ」とか、「さあ、皆様、やりましょう」というような意味だね。射的場があって「とにかく矢ってんべ」の看板があった。飛騨方言に訳すと何というフレーズになるかな?
君:そしゃ、そやぞ。
私:そうだね。飛騨の人間ならだれでも知っている常套句だ。文字通りに「そういうことなら、そういうことですね」と訳しても意味が通らない。ここは迷うことなく意訳で行くべきだ。「さあ議論は出尽くした。結論はそれで行こうじゃないか。」という意味だ。「やってんべ」も「そしゃそやぞ」もオピニオンリーターがひと言を発して全員に行動を促す言葉だ。
君:伊香保温泉の名前は聞くけれど、どこ?
私:群馬県だ。榛名山(はるなさん)という名山があり、榛名山を代表する温泉だよ。
君:つまりは「やってんべ」は群馬県を代表する方言なのね。
私:僕は国語学者でも旅行家でもない。単なるアマチュア。たまたまの体験談をここに記載するだけだ。お隣の県・栃木のお国言葉としても有名らしい。だから、群馬・栃木辺り、つまりは北関東の方言らしいね。その射的場には「よってがっさい」もあった。「寄ってござりんさい」の意味だろう。
君:どうやら群馬と栃木、つまりは上野(こうずけ)・下野(しもつけ)には明確な方言境界はなさそうね。
私:多分ね。多分、なんて言い方は都竹都年雄先生には叱られそうだが。
君:あなたなら品詞分解は出来るのよね。
私:ああ。「やって(やりて促音便)」+「ん(接続助詞・の)」+「べ(関東べい)」だろう。
君:つまりは相当の言葉が省略されて「やってんべ」になっているのよね。
私:そうだね。「やりて(みること)の(結論たる)べし」位が答えだろう。何の事は無い、飛騨方言の「そしゃそやぞ(さであればさであるぞ)」と同じマインドだ。
君:「べ(関東べい)」について簡単に説明してね。
私:関東平野全体で使われるから、関東べい。スマップの中居君がついつい「〜だべ」とか言ってたかな、彼は神奈川県のご出身。私が子供の頃、NHKで夕方に「三太物語」をやっていた。神奈川県の山側地方が舞台。

君:少しどころか、大幅に脱線よ。群馬県の話に戻してね。
私:関東平野とそれを囲む山間部には「だべ」「〜べ」の共通の言い回しがあるという事だね。上野・下野の上位に位置する概念、という事のようだ。
君:それで、どうだった、伊香保?
私:温泉は言う事なし。ただ、距離がね。
君:ほほほ、自宅からは遠すぎるのね。
私:違う。近すぎるんだ。
君:意味が分からないわよ。
私:確かに家内にとっては遠いところの伊香保温泉だっただろう。朝早くに名古屋駅に着き、新幹線に乗り東京へ、上越新幹線で高崎へ、バスで伊香保へ。
君:随分と遠いじゃないの。
私:オートバイで日帰りできる距離だな。近すぎる距離だよ。自宅を出て、中央道を諏訪まで、和田峠を越えたら上越道で目指せ軽井沢、あとは碓井峠を下り松井田妙義で降りて、さあ目指せ榛名山、伊香保はすぐそこだ。
君:でも、ただ走るだけ。とんぼ返りという事なんでしょ。
私:走る事が目的。だからとんぼ返りでもかまわない。ああ、あんなに遠くへ日帰りで行ってきた、と言う満足感は何事にも代えがたし。
君:ほほほ、近すぎる距離だなんて。苦労して遠くの温泉に行って、しかも温泉に入らないライダーの気持ちがわからないわ。

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