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大学を卒業、研修医を終了した時に少し休暇をもらい、ヨーロッパに同僚と旅行をした事がありました。
一カ国をたった一日ないし二日滞在、ただひたすら移動して十カ国ほど巡る大変忙しい旅でした。
旅の後半はスペインのマドリード、イタリアのローマ、ギリシャのアテネと次々と各国首都を訪れましたが、今もよく覚えている単語があります。
持っていった資料は薄っぺらの旅行会話本でしたが、何事にも貪欲な知識欲がありましたので、会話もなるべく使ってみようと
意気込んでおりました。
買い物とくれば、値段交渉、つまり数字の表現および通貨単位をにわか勉強する次第です。
スペインではペセタという通貨単位です。数字の壱はウナ、従って壱ペセタはウナペセタ、
マドリードの街角で隣にいた二人のいかにも貧乏そうな若者二人がペチャペチャ喋っていましたが、
彼らの会話の中に、何度かウナペセタが出てくるので、彼らの会話の内容が自ずから想像できました。
A."俺、今日、スッカンピンなんだ。一銭も持ってないんだよ。"
B."何、一銭も持ってないんだって。俺と同じじゃねえか。俺も一銭も無いんだ。"
A."あーあ、一銭もなきゃ、何も出来ねえしな。"
彼らの身振りから、このような会話内容だった事は間違いありません。私は彼らとウナペセタという単語をしっかりと共有していました。
数日後、すでに私はローマです。
ホテルの前で一人バスに乗りフォロロマーノへ観光に行く予定でした。
バスは81番である事を確かめていました。
例の旅行会話本で81がイタリア語でオッタントゥーノと発音する事は調べていました。オッタントは英語の eighty と同じ意味なのです。
そして数字の壱はやはりスペインのウナに近い音、ウノ、オッタント+ウノでオッタントゥーノなのです。
私が待っているバス停へ、そこへ如何にもシチリアの田舎から昨日出てきたばかりと言う感じのおばあさんが、私に話しかけてきたのです。
しかも、彼女は少しあせっている様子でイタリア語も何もわからない私に喋りまくります。自分のメモを私に見せて、バス停の表示を指しながら
さかんにオッタントゥーノを連発します。ピンときました。
"ねえねえ、お兄さん、私ゃ田舎からこんな大都会に来て、(娘に会いに)このメモのバスに乗っていかにゃならないんだけど、
私ゃ数字が読めないんだよ、81番なんだよ、81番、あんた81の数字くらいわかるだろ、このバス停81番なのかい、あっホラ、バスがきた、
これ81番バスかね、私しゃ急いでんだけど。"
と間違いなく、ご婦人は私にお話しになったのです。私が"そう、81番です、間違いない"、というとえらく感謝されてしまいました。
生まれて初めてイタリアに旅行して、いきなりイタリア人に道案内をしてしまった、何ともはや、勲章物でした。
数日後は駆け足旅行の私は既にギリシャの首都アテネです。流石にここではウナやウノのエピソードはありませんでした。
たった今、ギリシャ語辞書というキーワードでインターネット検索をしたら
ギリシャ語サイトリンク集 http://members.at.infoseek.co.jp/yudoufu/gai/gri.html
というのがヒットしました。その中に英ギリシャ語辞書 http://www.kypros.org/cgi-bin/lexicon が紹介されていたので早速、
英語で one を入力すると、やはり予想通りでした、enas, mia, ena と出てきます。どうもウノではなくエナ(ス)のようです。
つまり、スペインからギリシャに至るまで壱を意味する言葉はウナ、ウノ、エナと変化しているのでしょう、確信が持てました。
ついでです。あすはトルコ、キプロスを回り、エジプトの言語、辞書探しをしましょう。
ついで西に向かい、モロッコまで地中海諸国を一巡りしましょう。
果たして壱は皆さん何と発音してみえるのか、何分にも突然にアラブ圏です、北アフリカ諸国ではウノで無い可能性は十分あります。
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