純文学 |
小説 人間の條件 五味川純平 三一書房 |
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一橋中退、東京外大卒、満州に召集、部隊は全滅、数名の生き残りとして1948に引き上げ、戦後は従軍体験として人間の條件を発表し、小説は一千万部を超えるベストセラーに、という事で、私もその一人です。教養部時代に三一書房から出版された六部作の文庫本を貪るように読んだのでした。 実体験を基に書かれた小説という事で、描写はそれはすさまじく、本を持つ手が震えながら読まざるを得ません。また、時間の経つのも忘れてしまいますし、徹夜してでも一挙に読む事をお勧めします。白眉は、国境を超えるために殺人鬼、つまりは一人のソ連兵を殺して一歩でも祖国に近づこうとするあたり荒野をさまようあたりでしょう。結局、主人公は最後の章、雪の満州で死んでしまいます。 実は、以上が前置きです。私が教養部の時代(1972-3)には映画・人間の條件が封切られていて、映画好きの友人がたまたま、私を誘ってくれました。映画も確か六部作で一本が一時間以上だったか、これをオールナイトで一挙に上映するというのです。友人と、友人の彼女、彼女の女友達、それに私、というにわか四人組でしたが、私は教養部時代にはバイトに明け暮れていたものの、青春真っ只中、このような男女の体験があってもいいじゃないか、人生勉強と思い、誘われるがままに出かけたのでした。 彼女の女友達と私は当然ながらにわかのカップルにて初対面です。私が、お互いカモフラージュ役ですね、と挨拶するや微笑む彼女。その後、お会いしていません。にわかカップルに愛のキューピッドは微笑まなかったようです。感動の名作でしたが、実は、一睡もせず最後まで興奮して鑑賞していたのは私だけでした。尤も隣のカモフラージュの彼女がうつらうつらしたり、かすかに寝息が聞こえはじめたり、そちらが上映中の映画以上に気が気でならず、寝る暇などなかった一夜でした。青春の甘い思い出というのはこのような事を示すのでしょう。懐かしく思い出されます。 ・・正直申しますと、映画をオールナイトで見たのが先で、其の後に徹夜して読書した私でした。今の私に二夜も徹夜して没頭する事があるのか、無いですね、残念な事ですが。私も歳を取ってしまい、最早、若さを爆発させるような事はできません。 以下の通りですが、予告映画が公開されていました。アマゾン等でも入手可能です。 |