Dr. WC Roberts

The American Journal of Cardiology
元編集長 ならびに
The Heart (by Dr. Husrt) 分担執筆者
Dr. William C Roberts

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文責  山本内科耳鼻科院長 山本秀平 (2003/9/4)


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米国人の心臓専門医ロバーツ先生、彼は私にとっては生涯忘れる事の出来ない先生です。 大学病院に勤務していた時代の話で二十年近くも前の話になりますが。 その頃、私は心筋シンチグラフィーという当時は新しい心臓検査法に取り組んでいました。 対象の患者さんは筋ジストロフィー症という難病のご病気の方です。 データを整理し、新しい知見が得られたので早速、統計処理を行い、 どの医学雑誌に投稿しようか考えながら文献検索を行い、論文作成の下準備にかかりました。

文献検索で数多く出てきたのが実はロバーツ先生の若い頃のご業績でした。 勿論、彼はすでに世界的に有名な心臓病の権威、特に心臓病理学の大家であり The American Journal of Cardiology の編集長をして見えました。

一つ困った事は私の知見が彼の論文と相容れない所が多く、 大げさな言い方をすれば、ロバーツ先生が私のデータをみれば私と学問論争になると考えたのです。

ところで論文が医学雑誌に掲載される仕組みを簡単に説明しますと、 編集長は投稿論文の内容を把握し、彼の一存で百名前後の審判員(査読者)のうちの数名にコピーを郵送し、 掲載するに足るか判定を仰ぎ、たいていはイチャモンがきますので、その旨を書いた手紙を添えて投稿者に一旦、返却します。 投稿者はイチャモンに反駁、或いは疑問点を修正し、再度投稿しますと編集長はまた同じ査読者に郵送し、イチャモンが無ければ、 おめでとう掲載しますと、なおもイチャモンがあれば不受理ですと、いずれかの返事を投稿者に書きます。 今は勿論、電子メールのありがたい時代ですが、当時は専ら航空便でした。

ここで私は本当に数週間悩みました。やはり The American Journal of Cardiology に投稿すべきであるかとも思いました。 何故なら彼の若い頃の論文とけんかしようという内容だから、彼は私の論文にきっとおやっと大変な興味を持ってくれるだろう。 いやまて、彼とて人間、私が如き業績も無い無名の医者の論文なぞ、 適当な理由をつけて不受理とする事など簡単に出来る事ではないか、彼はその立場にある。

或いは他の雑誌に投稿しようかとも考えました。そして神のみぞ知る、どうかロバーツ先生だけには査読されなければ、 私の論文は掲載される(この世に出る)可能性が高い。でも、無理だろう、彼こそその道の権威なのだから、どの雑誌に投稿しても 結局は間違いなく彼に査読が行くだろうなあ、すごいイチャモンが来るだろうなあと、とにかく考え悩みました。

と言う事でしたが、ついに私は決断し、前者を選びました。 彼自身の雑誌に投稿したのです。 彼宛の手紙には、あなたの過去の論文とは相容れない内容を書いているので、 編集長という立場を超えてあなたにこそ査読していただきたいのです、と正直に書きました。 まさに真正面から切り込む作戦です。

数週後、彼から返事の手紙がきました。 君の論文を私自身が興味を持って読んだが、別の査読者二名にも郵送した、 掲載可能かどうかは私ではなく両名の評価次第であると。

そしてその結果ですが、査読の両先生からは少しのイチャモンは来ましたが、反駁の手紙をすぐ書いた所、数週しておめでとう掲載しますとの手紙です。 私はその時に本当にロバーツ先生のフェアプレー精神に感動しました。

話はそれだけでは有りません。その何年か後のことですが、 世界で最も有名な心臓病学の専門書The Heart (by Dr. Husrt) 改訂版が出版され、私にとっては仕事道具、すぐに買いましたが、 やはりロバーツ先生は分担執筆者に名を連ね、心筋症の部門を担当して見えました。

何気なく読み始めると何と私の論文が掲載されていました。彼は私が如き無名の医者の仕事を覚え続けて見えたのです。 内容は私にとっては名誉な事でも彼にとっては不名誉な事であろうにロバーツ先生、本当に有難うございます、と、 またしても思わず叫んでしまった私でした。

Reference

Yamamoto S, Matsushima H, Suzuki A, Indo T, Matsuoka Y: A comparative study of thallium-201 single-photon emission computed tomography and electrocardiography in Duchenne and other types of muscular dystrophy. Am J Cardiol 61:836-41, 1988

追加 (2003/9/20)
そう言えばロバーツ先生とのやり取りは私の渡米時期にまたがっていました。 投稿しましたのは渡米前、受理、掲載されたのは渡米中、教科書に掲載されたのは帰国直後の話です。

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