大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言における間投助詞・なあ

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別稿・飛騨方言における助詞・な に記載したとおりですが、
          共通語用法    飛騨方言用法
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間投助詞
 文節の切れ目   これな、それな  同じ
 動詞接続     いらっしゃいな  用法無し、き(来)んさいな
                   等の別言い回し
 助動詞・だ、接続 そうだな(男)  用法無し、
                   そうやぞな、(別助詞・ぞ、を挿入)
 助動詞・や、接続 用法無し     そうやな(寧ろ女)
 形容詞接続    おもしろいな   同じ
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(以上再掲)共通語と同じという事ですから改めて書く事もないのですが、 そこを敢えて。実は、発音が二通りあります。
  • 文字通り単音で発音する場合と、
  • なあ、と長音になる場合があるようです。この場合は必ず尻上がりになります。
まさにこの点についてのネット情報発信が筆者の知る限り二件あり、ご紹介します。
  • 山之村小中学校学習課題記事 www3.ocn.ne.jp/~yama-jh/08sakuhinn/0808/0808.htm 飛騨言葉について "例えば「そ〜なんやさ〜」「そしてな〜」などと語尾の長音を上げ下げする。"
  • madocamera.cocolog-nifty.com/madocamera/2006/06/post_c9f2.html 松田まどか様ブログ "やっぱり東京の人に1番びっくりされるのは・・中略・・ 何かニュアンスが違う気がするんですょね(*x_x) 後は“なーなー”かな?? 今「…えっ(×゜▽゜)?」って思ったでしょ!!笑 標準語で言う“ねーねー”です。"
山之村小中学校の生徒さん、松田まどかさんこんにちは。 一瞬の言葉遣いにお国訛りがでるというのはこの事ですね、ははは。 上記の情報は飛騨出身の方にはピンとくるはずの方言講座ですので、 そしゃここまで。

さて飛騨方言をご存知ない方に上記の表に付帯してご説明しましょう。 まず文節の切れ目の間投助詞について、 これな、それな、というよりは、これなあ○●、それなあ○● という口調がより飛騨方言らしい口調という事になります。(アクセント;○弱、●強、の意味です。) ただし、子供・女子に多い口調ではないでしょうか(失礼)。 男子、老年(男女とも)では、こりゃなあ○●、そりゃなあ○●、 の言い回しがむしろ自然でしょう。

そうやぞなあ○●(そう+断定の助詞・や+男性格終助詞・ぞ+ 間投助詞・なあ)、の言い回しも 普通は男子、老年(男女とも)の言い回しです。 子供・女子が用いる事はあまりないでしょう。

そうやなあ○●、おもしろいなあ○●、は共に飛騨方言らしい口調です。 老若男女ともに用います。 ところがここにひとつ飛騨方言文法が入ります。 単音の"な"の場合は、この"な"という音は女性格終助詞・な、を意味し、 念を押す、という意味になり、間投助詞ではなくなります。 例えば、"そうやえ●な○。"とは、"そうなのよ。間違いないわよ。"という意味であり、 "そうなのね、間違いないのよねえ、おそらく。"という意味ではありません。 "おもしろいえ●な○。"にして然り、 意味は実は"いやあおもしろかったわ。傑作だったわ。"です。 "そうねえ、面白いといえば、面白いのだけれど。"という意味ではありません。 また,"な"にアクセントがあれば単音・な、であれ、長音・なあ、であれ、 断定の意味になります。飛騨方言談義以前の事、日本語がそうなっているという事でしょう。

ところで間投助詞とて若し文頭に来たらどうなりますか。 (初投助詞とは言わないのでしょうがねえ、ふーむ。むしろ感動詞でしょうか。) さて共通語ですが、なあなら男言葉、ねえなら女言葉でしょう。 ところが飛騨方言では男女とも、なあ、です。 更には飛騨方言の呼びかけの言い回しは男性は普通は相手に対して 非尊敬語・わり、を用い、女性は逆に尊敬語・あんた、を 用います。 つまりは飛騨方言の言い回しは男は常にいばっている、 女性は常に控えめというわけです、ふふふ。 これを表にしますと、
    共通語    飛騨方言
男性  なあ、君   なあ、わり
女性  ねえ、あなた なあ、あんた
というわけです。 なあ、あんたがた、これでわからはったろ。
(=ねえ皆様、これでおわかりですね。)
まとめ
 単音・な、なら断定の終助詞で決まり。ただし単音であっても強アクセントとは限らない。
 長音・なあ、なら間投助詞(つまり○●)の事も、断定の終助詞(つまり●○)の事もある。

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