大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨方言における形動ナリ終止形

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別稿に飛騨方言文末詞・なで をご紹介していますが、実際には、この二拍文末詞の 後ろ部分すら脱落して、単に、な、と言う事も多いようです。 終止形のみで用いられます。 また更には、なあ、と長音化する事も多いでしょう。

最も重要な点はアクセントです。
  • 平板型アクセントの体言に接続する場合は この文末詞にはアクセント核があるのです。 必ず、〜な。(〜▼)、ないし、〜なあ。(〜▼○)、で発音します。 平板で話せばそれは最早、飛騨方言ではありません。 たととえば、巧みな、は○●●▼、になります。
  • 頭高や中高の体言に接続する場合は逆にアクセント核は 消失します。しょうじきな(=正直だ。)は、○●●▼○、 と発音して、アクセント核は、き、に移ります。
例文ですが、
 立派なお話やったさ。学者な!
 立派なお話やったさ。学者なあ!
 (=立派なお話でしたね。学者だ!)

 またブランコやりたいと。こどもな。
 またブランコやりたいと。こどもなあ。
 (=またブランコをやりたいのだって。子供だ。)

 お祭り男の○○さんぁ元気やなあ。参院選挙な。
 お祭り男の○○さんぁ元気やなあ。参院選挙なあ。
 (=○○さんは元気ですね。参院選挙だ。)

 みよよ、汗かいでがんばりょござる。一生懸命な。
 みよよ、汗かいでがんばりょござる。一生懸命なあ。
 (=見て、汗をかき、頑張っていらっしゃる。
  一生懸命だ。)

 立派な作品や。ほんとに巧みな。
 立派な作品や。ほんとに巧みなあ。
 (=立派な作品ですね。本当に巧みだ。)

 ええ人やなあ。正直な。
 ええ人やなあ。正直なあ。
 (=いい人ですねえ。正直だ。)
お察しの良い方には書くまでも無い事ですが、 つまりは、〜なり、と同じ意味になり、 形動ナリの終止形が訛った言葉でしょう。

形容動詞とは限りません、要は、体言+なり、という 飛騨方言の言い回しが、〜な、と言う事になります。 ただし筆者が幾ら内省実験をしてみても、 体言が一拍の場合はこの用法はアウトなのです。 その場合の代替の話法は、〜や。、です。 例文ですが、
 (○)あれは木や。(×)あれは木な。
 (=○あれは木だ。)

 (○)子供を心配せるのは親や。
 (○)子供を心配せるのは親な。
 (=○子供を心配するのは親だ。)
また体言部分が二拍以上で明らかに形容動詞の語幹ならば、 文句なしに飛騨方言のセンスに合います。
 (○)やめまいが。味がへんや。
 (○)やめまいが。味がへんな。
 (=○やめておきましょう。味が変だ。)

突然ですが、小学生の時に、そんな馬鹿な、そんなバナナ、 などと言って遊んでいた事を思い出しました。

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