大人と子供の理想関係 〜風呂にはバスロマンを〜
「お風呂わきましたよー」
万事屋内に、新八の声が響く。
その声に神楽が「私が入るアル! 一番風呂ネ!」と真っ先に立ち上がった。
更にはの腕を引き、一緒に入ろうと誘う。
が、そのもう一方の腕を掴んで引き止めようとする手があった。
新八ではなく、もちろん神楽でもない。
となれば、残るはただ一人。
「お前は一人で入ってこいよ。は俺と一緒に入るんだもんな?」
銀時の言葉に、ははにかんだ笑みを浮かべる。
恥ずかしいけれども、それでも銀時に誘われたのが嬉しかったらしい。
腕を引かれ、素直にその腕の中に収まる。
だが異議は、別のところから唱えられた。
「ずるいネ、銀ちゃん! は私が先約アル!」
「銀さん。それはさすがに犯罪ですよ」
膨れる神楽に、明らかに軽蔑の眼差しを向けてくる新八。
だが、この程度で動じる銀時ではない。
「うるせー。世の中にはなァ、17になった娘と一緒に風呂入るオッサンもいるんだよ。
それに比べりゃ、12の妹と一緒に風呂入るなんざ、常識の範囲内ってヤツだろーが」
「なァ?」と同意を求められ、は困ったように新八を見た。
大好きな兄である銀時に誘われたのだから、嬉しいのだろう。
しかし、仲良くなった神楽にも誘われ、それもまた嬉しいのだ。
板ばさみになってしまい、とりあえず第三者でる新八に助けを求めているのであろうが、だからと言って新八に何ができるわけでもない。
情けないことだが、銀時と神楽の二人を敵に回して勝てる自信がないのだ。
も困っているが、新八もまた困る羽目に陥る。
そんな二人を他所に、を挟んだまま銀時と神楽の言い合いは続く。
「とは久々のご対面なんだよ。兄と妹の感動的な再会を邪魔してんじゃねーよ」
「それならとっくに終わったネ! お風呂場は私との親交を深める場ヨ!」
「バッカ。肌と肌を合わせたスキンシップも感動的な再会には必要に決まってっだろ」
「銀ちゃんが言うとエロくさいアル。をそんな道に引き込むつもりアルか!?」
「兄と妹なら普通だろ。そんな道ってどこに行かせるつもりだよ、お前」
「普通じゃないネ! 銀ちゃんが関わって、清いままお互いをただ思い合う関係なんて信じられないアル!」
「神楽ちゃん、それどこの貞操問答?」
思わずツッコミを口にした新八の言葉も、二人の耳には届いていない。
今にも掴みかからんばかりの二人。その間で困ったようにしている。
それを見ていると、さすがに可哀想になってくる。
「もういいじゃないですか。ジャンケンで決めれば」
「んな適当な決め方でいいわけ無ェだろ!」
「ジャンケンがいいと思うよ、わたしも」
「よし、神楽! 『最初はグー』だからな! 遅出しすんじゃねーぞ!!」
「それはこっちの台詞ネ!」
新八が口にした案は即座に却下されたが、が同意すると即座に採用らしい。
何やら理不尽なものを感じる新八には目もくれず、真剣な面持ちでジャンケンに臨もうとしている銀時と神楽。
そんな二人に交互に目をやりながら、は新八の様子にも気付いていたらしい。
「? どうしたの?」
「あ……イヤ、うん。僕、もう帰るから。そこの二人のこと、よろしくね?」
「う、うん! ばいばい、また明日ね!」
にこにこと手を振って見送ってくれるは、確かに可愛らしくて。
確かにこんな妹がいたら、過剰なまでのシスコンになってしまう銀時の気持ちもわからないではないが。
だからと言って、ロリコンにまでは発展しないでほしい。
そう祈るものの、無駄だとは悟っていたが。
事務所に響く歓声と怒声を背に、新八は溜息をつきながら万事屋を後にしたのだった。
<終>
ロリコン話、第二弾(ヲイ)
こんな小ネタを、気が向くままにちまちまと書いていきたいと思っております。
……すみません。趣味です。
そして「貞操問答」ネタも管理人の趣味であったのでございます。(貞操問答ナレーション風に)
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