デカプリン記〜その4〜
半分だけ入れたのに、すでに全員の胃の容量をオーバーしているのは一目瞭然であった。
全員の胸の中に辞めたいという叫びがこだまする。でも引けない。今引けば食い物にもならない
ごみが24人前できあがるだけである。せめて食い物としてごみになった24人前のプリンにしてやってから
供養してやるのが大人であろう。
半分のプリンをじっくりコトコト煮込んで泡立ってきた。これは残り半分の牛乳の入れ時を示すサインである。
待ち焦がれていたような、そうでないような雰囲気の中、もう半分を投入する。
鍋の取手の部分が埋まるほどの量である。見てるうちに気が遠くなってきて混ぜる手が何度も止まった。
しかし今でこそ思うのだがこの写真の流れ出す牛乳が微妙にくびれていてエロティックである。
そこだけが救いである。ちなみに混ぜてる手、つまりド派手なアロハの人物は管理人で、牛乳を
入れているのは友人Kである。
残り半分の牛乳を入れたら再び煮上がるのを待つだけ。時間にして10分程度の話である。
ひたすら焦げないように待つのだが混ぜるのが面倒で4人で交代しながらノルマをこなした。
混ぜているうちに、この鍋の中がプリンの素であることを皆忘れた。もうそれはなんでもない、
ただの鍋一杯の甘い香りのする液体であって食い物である感覚はなくなっていた。
無価値、無気力、無関心な4人組はようやく待ちわびた再沸騰の時を迎え、プリンの原液を洗面器に移して
冷却するプロセスへ移行することにした。洗面器に収まるかどうかが疑問であったが、そこは気にしないで
余った分は捨てればいいという行き当たりばったりな精神でやっつけ仕事全開。4時55分の市役所職員並みの
やっつけ仕事である。
と、ここで平安美人がいいことを言い出した。
『100度もあるんだからいきなり入れたら洗面器溶けるんじゃないの?』
こんな時でも優秀な平安美人に拍手である。やる気はないが脳は少々あるようだ。
たらいに氷と水を張り、鍋を入れる。
なんだか少しだけ美味しそうに見えてきて、そんな自分が怨めしかった。
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