デカプリン記〜その5〜
鍋の形のまま固形化してしまうのは意に反するというか、むしろ冷蔵庫に収まらない半液状の
物質に成り下がるオチを生むことにしかならないのである程度まで冷えたら洗面器に移す。
洗面器は期待通りの容量で全てを受け止めてくれた。素晴らしい包容力であったのだが、
『少しは捨てさせろよ』 という全員のはかない希望を打ち砕いたとも言える。
大体40度ぐらいになったのでそろそろ冷蔵庫に移せると判断し、サランラップを被せて上に
氷を載せて上下左右からの冷気で一気に冷却することにした。我ながらあっぱれなプランでは
あったがいかんせん氷が少なすぎた。
『鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん』
と昔の中国の民はうまく言ったが、我々は牛を割くにも鶏刀と鶏並みの脳味噌しか持ち合わせて
いなかった。現実とは常に皮肉的である。
馬鹿でかいものには馬鹿ほどの労力を割かねばならないのは世の理で、当然冷やすのも24人前分
冷やすことになる。頑張るのは冷蔵庫だが冷蔵庫の原動力である電気も24倍、我らが中部電力にも
一般家庭の24倍の負担を強いることになる。どこまでも迷惑なプリンだ。
しかし我々はただ待つというほど暇人ではない。テレビを見、ゲームでもやって時を過ごすのだ。
4時間ほどゲームをするとそろそろ冷えてきた予感が漂う。それになんだか腹が減ってきた。
プリンが食いたい・・・
冷蔵庫を開けるとそこにはうっすらと固まっていそうなプリンがあった。よく頑張った冷蔵庫、
よく頑張った中部電力。もう中が液体でも固体でも構わないから開けることになった。これ以上待てば
寝殿造りのたんすの肥やしにしかならない。
無駄にでかいとはこのことだ。皿よりもでかい。きっとこの皿を作った人もこんなにでかいプリンが乗るとは
思わなかっただろう。
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