大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
ありがとう2 |
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僕:昨日は「ありがとう」の飛騨方言アクセントについて語った。今日は続きを。 君:普段のアクセントがアクセント辞典のそれと異なっていたので心ポッキリという事ね。 僕:そうなんだよ。三省堂アクセント辞典の記載について語ろう。なぜ東京語では「ありがとう」のアクセントは第二モーラ「り」なのか、という命題。 君:簡単にひと言で書いてね。 僕:うん、ひと言でいうと、これは金田一学と言ってよいだろう。故・金田一春彦先生。手元には明解日本語アクセント辞典第二版がある。最近、手に入れた。そこにはギッシリとアクセント則が書かれている。 君:ギッシリでも簡単に説明してね。 僕:先生は複雑怪奇な東京アクセントを品詞分類の観点から99の法則でまとめた。また更に音韻とアクセントの関係という観点から独立した法則として a-d の四つの法則にまとめた。「ありがとう」「おめでとう」は品詞的には感動詞(66則)、そして「ありがとう」の音韻変化は d に該当し、「ありがとう」は 66d の法則が当てはまる、とまあ全ての言葉に法則の番号をお付けになったんだ。2021年版、つまりは最新版に至るまでこの辞典スタイルは踏襲されている。 君:不動の法則のようね。 僕:「ありがとう」という言葉は挨拶語には違いないが、ラ変動詞「ある」連用形+形ク「かたし難」ウ音便というように考えてしまうとだめ。あくまでも五拍の感動詞と考える事から始まる。 君:確かに「ありがとう!」と言えば感動のあまり発する言葉よね。「おめでとう!」もそうだわ。 僕:ところが問題。 d の定義は拍数が変わらず音韻が変わるものは原則として元の言葉のアクセントを踏襲する、という規則だが、ならば「おめでたく」が元の言葉である「おめでとう」は 66d のはずだが、実際は辞典の記載は 66 、そして「ありがたく(平板)」が元も言葉である「ありがとう(中高)」は d の定義が当てはまらないはずだが、実際は辞典の記載は 66d 。 君:わかるわよ。その気持ち。 僕:ねっ、でしょ。つまりは三省堂辞典の記載は間違い。「ありがとう ->66」「おめでとう ->66d」に改めるべきだ。天下の金田一先生も、ついうっかり見落としておられた、という事。それと歴代の三省堂アクセント辞典編集部も見落としていらっしゃる。 君:世の中にはそういう事はよくあるのよ。 僕:だろうな。僕はこのような重箱の隅をつっついたようなお話が大好きだ。残念ながら金田一先生は故人。お伝えのし様がない。昨日来、複合形容詞のアクセントをあれこれ調査している。特に形ク「かたし難」の連用形ウ音便。 君:ほほほ、ゆるしがたい、とか。「ゆるしがとう」なんて日本語はないわよ。 僕:ええ、ありません。 君:得難い経験だったわね。ほほほ |
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