飛騨方言におけるラ行動詞の撥音便とは、例えば、みるな、という禁止の表現を、みんな、という
言い回しです。
うむ、どれほどあるのでしょうか。
とりあえずは二拍動詞からの転、つまり三拍品詞として内省してみましょう。
アクセント記号は、●は高、○は低、▼は高なれど続く拍が低、を意味します。
共通語 飛騨方言
在るな 不成立、共通語としても苦しい表現ですね
入るな いんな ▼○○ 共通語=いる、飛騨方言=おる
居るな おんな ▼○○
要るな 不成立、いらんのやさ、と普通は言うでしょう
射るな いんな ▼○○
鋳るな いんな ▼○○
炒るな いんな ▼○○
煎るな いんな ▼○○
売るな うんな ○●▼
得るな えんな ▼○○
獲るな えんな ▼○○
選るな えんな ▼○○
折るな おんな ▼○○
居るな おんな ▼○○
織るな おんな ▼○○
駆るな 不成立、駆けんでもええ、と言うでしょう
刈るな かんな ○●▼
狩るな 不成立、狩ってゃあだしかんぞ、でしょうか
借るな かんな ○●▼
着るな きんな ○●▼
切るな きんな ▼○○
斬るな きんな ▼○○
伐るな きんな ▼○○
来るな くんな ▼○○
繰るな 不成立
蹴るな けんな ○●▼
凝るな こんな ○●▼
去るな 不成立、さらんでくりょ、と哀願調が飛騨方言でしょうか
知るな 不成立、しらんでもええ、でしょうか
するな せんな ○●▼
剃るな 不成立、そらんでもええ、でしょうか
反るな 不成立、そらんでくりょ、と哀願調が飛騨方言
足るな 不成立、飛騨方言なら、たるとろくなこたぁねえ
散るな ちんな ○●▼
釣るな つんな ○●▼
吊るな つんな ○●▼
照るな 不成立、飛騨方言なら、てらんでくりょ、と哀願調
盗るな とんな ▼○○
採るな とんな ▼○○
取るな とんな ▼○○
撮るな とんな ▼○○
録るな とんな ▼○○
捕るな とんな ▼○○
執るな 不成立、飛騨方言なら、とらんでもええ
摂るな 不成立、飛騨方言なら、とらんでもええ
成るな なんな ▼○○
鳴るな なんな ▼○○
為るな なんな ▼○○
生るな 不成立、飛騨方言なら、実がならんでもええ
煮るな なんな ○●▼
似るな 不成立、飛騨方言なら、似んでもええ
塗るな ぬんな ○●▼
寝るな ねんな ○●▼
練るな ねんな ▼○○
煉るな ねんな ▼○○
錬るな ねんな ▼○○
乗るな のんな ○●▼
載るな 不成立、飛騨方言なら、のらんでもええ
張るな はんな ○●▼
貼るな はんな ○●▼
簸(ひ)るな 不成立、飛騨方言なら、鼻かむな
減るな へんな ○●▼
経るな 不成立、共通語としても苦しい表現
彫るな ほんな ▼○○
掘るな ほんな ▼○○
まんな ▼○○、小便をする=方言動詞まる●○
見るな みんな ▼○○
診るな みんな ▼○○
観るな みんな ▼○○
看るな みんな ▼○○
視るな みんな ▼○○
盛るな もんな ○●▼
漏るな もんな ▼○○
守るな 不成立、共通語としても苦しい表現
やるな やんな ○●▼
遣るな やんな ○●▼
寄るな やんな ○●▼
拠るな 不成立、飛騨方言ならよらんでもええ
因るな 不成立、飛騨方言ならよらんでもええ
縁るな 不成立、飛騨方言ならよらんでもええ
由るな 不成立、飛騨方言ならよらんでもええ
選るな 不成立、飛騨方言ならよらんでもええ
割るな わんな ○●▼
こうなりますと、やはり規則と言うものが見えて参ります。
まずは自動詞では一部は不成立、他動詞は全て成立という事でしょうね。
頭高型動詞では▼○○、平定型では○●▼となるのも当然の現象でしょう。
もう一点ですが、飛騨方言ではポピュラーな言い回しなので、
つまりはありふれた動詞ではすべて成立します。
ただし、難読の動詞は不成立という事でしょう。
おっとアクセントが主題でした。
きんなといっても、○●▼なら着るな、▼○○なら切るな、で決まりですね。
おまけ
つまりは、平凡な結論です。
撥音便があろうとなかろうと共通語とアクセントは同じなのでした。
三十分ほど、内省しつつキーボードに向かったのでしたが、
共通語として奇怪なアクセントは結局は無かったのでした。
でも折角だからもったいないと思ってアップロードしちゃいました。しゃみしゃっきり。