大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

とちかんじょ・飛騨方言、のアクセント
副題・官女と怪獣、美女と野獣

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超大型の毛虫クスサンの飛騨方言名はとちかんじょですが、そのアクセントは○●●●●、つまり平板型です。ところで、飛騨のことば、土田吉左衛門・著、には同語に橡官女の漢字を充てて語源としていらっしゃるようです。筆者は音韻の点からこの説に異論を唱えます。同書は古書であり、著者ご略歴(お生まれ明治四十年)から故人である事はほぼ間違いないでしょう、問い合わせる術もありませんのが残念です。

さて、飛騨は純東京式アクセント圏なので、官女のそれは頭高▼○○です。これは、後部が漢字一字一拍(漢字音)の複合名詞(前部が漢字一字ないし二拍以下のもの)においては頭高になるというアクセント則によります。例、美女、淑女、工女、男女、子女、等々。またクスサンが巣くう橡・トチ(の木)は平板型○●、従って橡官女が語源であるとすれば、そのアクセントは○●▼○○、でなくてはならぬはず。

実際にはトチカンジョは平板型アクセントですから、音韻学的には橡官女を語源とするには無理があるのです。つまりは漢字の記載は自由ですが、後世の宛て字であろうと言う事になるのでしょう。

また宛て字そのものが、これまた問題ですね。毛虫が好きという人は極稀、誰もが嫌がるものです。しかもこの毛虫は超特大なのです。突然に眼前に現れれば気絶してしまう淑女、子女もおみえでしょう。ですから、音韻学的にピタリと合っているし素朴な感覚的にもあう、トチカンジョの語源は橡○●怪獣○●●●。佐七は一歩も譲れません。どうでしょうか、土田先生。

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