飛騨方言に、したる、という自動詞があります。
意味は、(水などが)したたる、こぼれる、などです。
従って、共通語・したたる、から一語脱落して、したる、に変化したのでしょうか。
答えは否です。
実は、飛騨方言ラ行四段自動詞・したる、は平板型アクセント○●●です。
一方、共通語・したたる、は中高○●▼○、です。
つまりは若し共通語・したたるから変化したのであれば、そのアクセントは○▼○、
やはり中高でなくてはならないでしょう。
現実には平板型なのです。
もったいぶらずに大胆な筆者の発想をお披露目しましょう。
飛騨方言・自ラ四・したる、は、すてられている、という意味の自動詞ではないかと
推察します。
と申しますのも、飛騨方言ではかつて、捨てる、とは言わず、してる、と言っていたのです。
そのアクセントは、捨てる、と同じく平板型アクセント○●●です。
次に必要な知識は飛騨の俚言動詞です。たばる、というものがあります。
たべられるという意味の自動詞です。あかる、というのもあります。
あけられる、という意味です。
このように下ニ動詞をア行で活用させて自動詞にしたことばが、したる、で
あろうというのが筆者の推論です。
共通語 他動詞 自動詞
たべる○▼○ たべる○▼○ たばる○▼○
あける○●● あける○●● あかる○●●
すてる○●● してる○●● したる○●●
意味といい、音韻といい、ドンピシャリですね。
やはり、したる、という動詞は、してる、と対の動詞なのです。
従って、その意味は、捨てられている、という事なのです。
つまりは、したる、の語源は、したたる、では無いでしょう。