大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

アスペクトの正体は「状態」にあり

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私:今日は方言学の学術語「アスペクト」のお話でも。
君:ほほほ、本当は俚言や語源を書きたいのじゃないかしら。いやだ、燃え尽き前。
私:ははは、そんなんじゃない。兎に角、このサイトの原稿は気まぐれだ。ふっと思った事を書く。いわば随筆だ。書きたい事は山ほどある。
君:「アスペクト」の事をふっと思ったのね。
私:その通り。
君:そもそもが「アスペクト」なんて日常語じゃないわよ。
私:それが方言学の人々にとっては日常語なんだ。でも僕は学者じゃない。アマチュアだ。だからこそ「アスペクト」を知って衝撃が走った日の事はよく覚えている。その心は・・ Oh. my God! Incredible! Shame on them. What hell term are they using?
君:その日が判明したのね。
私:2007/12/30 書き下ろし>言語学>アスペクト・テンスに関する一考察。今は2020、つまりは13年前。平気でこんな文章を書くという事は、いやあ若かったという事だ。つまり今の心は・・However, by all means, I am no more me myself at that time.
君:方言学は国語学の下位分類、然も古語の解析が重要、そこへ持ってきて英語の直訳どころか、発音そのものの学術語はないでしょ、というお気持ちだったのね。当時の貴方は。
私:その通り。或る意味、国語学会への批判。せめて素敵な日本語に訳してください、という意思表示。例えば神経、日本人が日常で使う医学用語は杉田玄白、前野良沢等が三年余の血のにじむ努力で解体新書を著したおかげだ。
君:位相・時相じゃなかったかしら。
私:いや、位相は別の意味に使われるし、時相は英語学の言葉。
君:方言学では伝統的に「アスペクト・テンス」の片仮名なのね。
私:13年もお付き合いしているとね、それはそれで違和感が無くなってしまうんだ。尤も、英語学で時相、国語学でテンスは如何なものかと思わないわけではない。ぶふっ
君:このサイトは殊更に難しい事を書こうとしているのか、とお感じの方が多いと思うわよ。
私:誰の為でも無い。
君:前置きが長いけど、なにか英語の話?
私:ああ、早速に話題提供。西日本、方言の使い分け発達 井上史雄 2016/10/30付日本経済新聞朝刊
君:英語の現在進行形ね。
私:いずれリンク切れ。だから要約しておこう。・・西日本では時間に関する表現がきめ細かい。「花が散りよる」と「花が散っとる」は、花が散る最中か散り終わったかが分かって、便利である。英語の現在進行形ingと完了形の違いに似ている。東日本では両方とも「散ってる」で、区別できない。・・
君:飛騨方言でも使うわよ。「きよる来」は「来つつある」。飛騨方言は畿内文法の系統よね。つまり文法的に西日本。
私:そう。品詞分解は「来る」連用形+補助動詞「をり居」だよね。
君:そうね。更に深堀りすると「をり居」は「ゐる(ワ上一)」連用形+「あり有」(自ラ変)だわね。
私:つまりは「きよる」は「き・ゐ・あり」か。ははは、現在進行形は関係ないね。でも僕には井上先生のお気持ちがよくわかる。
君:どういう事。
私:新聞記事の内容は方言学では正にアスペクトの問題だ。ただし日本人なら中学から英語を学ぶし、今は小学生にも教える時代。だから英語に例えれば国民一般に簡単に理解していただけるだろう、という意味でお書きになった。「似ている」という一言にその深いお気持ちが込められている。
君:日本語の事を皆さまに簡単に理解していただく為の魔法の言葉が「現在進行形」。
私:ははは、その通り。但しその魔法の言葉とやらもあまりスマートな訳とは言えないね。先人の苦労は推し量られるが。
君:言葉が長すぎる感じね。
私:一言でアイエヌジーと言ってもいろんな意味がある。英語の事は英語で考えるのが一番だ。
-ing1
★a suffix of nouns formed from verbs, expressing the action of the verb or its result, product, material, etc. (the art of building; a new building; cotton wadding).
★It is also used to form nouns from words other than verbs (offing; shirting). Verbal nouns ending in -ing are often used attributively (the printing trade) and in forming compounds (drinking song). In some compounds (sewing machine), the first element might reasonably be regarded as the participial adjective, -ing2, the compound thus meaning “a machine that sews,” but it is commonly taken as a verbal noun, the compound being explained as “a machine for sewing.”

君:「ビルディング」なら老若男女、誰でもわかるわね。
私:その通り。理由はたったひとつ。
君:ほほほ、「ビルディング」は日本語だから。
私:ははは、その通り。僕にとっても「アスペクト・テンス」は最早、完全に日本語。
君:英語にも方言はあるのね。
私:というか、スラングだね。多いのは。方言の最たるものがコクニー、ロンドンの下町言葉。実はイギリス人の大半が理解不可能。

君:ほほほ、英語はおしまい。そろそろ、結論ね。
私:そうだね。君が愛しい。補助動詞「をり居」は実は「ゐる(ワ上一)」連用形+「あり有」(自ラ変)だと教えてくれて有難う。
君:どう致しまして。
私:今までは「をり居」を使うとアスペクト表現になると思っていた。
君:ところが実は。
私:アスペクトの核心部分は「あり有」(自ラ変)だ。
君:ほほほ、「あり有」もたくさんの意味があるわよ。
私:「あり・をり・はべり・いまそかり」。「あり」で注目すべきは補助動詞ラ変「〜の状態である・〜ている」、つまりはこれがアスペクト表現の正体だね。ははは
君:ふふっ、小粒なれど真実を発見ね。「なり・たり」もアスペクトかしら。
私:そりゃそうだろう。「にあり・とあり」だからね。未だに記憶はリセットされず。妹(いも)はアスペクト(持続)の観点からは永遠のすがしめ(清女)。
君:あなはづかし。らうたげならむとおぼさるるこそいとをかしけれ。

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