飛騨地方には河の字を当てて、これを、ご、と呼ぶ地名が幾つかあります。筆者の知る限り下記の七つの地名です。
★旧吉城郡古川町数河 (よしきぐんふるかわちょうすごう)
( 現飛騨市古川町数河 (ひだしふるかわちょうすごう))
★数河高原(すごうこうげん)
★旧吉城郡神岡町数河(よしきぐんかみおかちょうすごう)
(現飛騨市神岡町数河(ひだしかみおかちょうすごう))
★旧益田郡馬瀬村 数河(ましたぐんまぜむらすごう)
(現下呂市馬瀬数河(げろしまぜすごう))
★濁河温泉(にごりごおんせん)
★旧大野郡荘川村 三尾河 (おおのぐんしょうかわむらみおご)
(現高山市荘川町三尾河(たかやまししょうかわちょうみおご))
★旧大野郡久々野町 無数河(おおのぐんくぐのちょうむすご)
(現高山市久々野町無数河(たかやましくぐのちょうむすご))
しかもこの七つの地域は飛騨の端から端まで点在しているのです。
このだだっ広い、飛騨、という一地方がひとつの文字文化圏である事がわかります。
上記の地名の読みを私なりに推察しますと、
- (1)河(かわ)、は、濁音で当初、すうがわ、にごりがわ、みおがわ、むすうがわ、と発音され、
- (2)やがて、すうごう、にごりごう、みおごう、むすうごう、と発音されるようになったのでしょう。
- (3)そして、すうごう、では、う、が脱落し、すごう、となり現在に至ったという事でしょう。
- (4)次いで、にごりごう、みおごう、むすうごう、はそれぞれ末尾の、う、が脱落して、にごりご、みおご、むすうご、に変化したと考えられます。
ここで、にごりご、みおご、の語変化は終了し、現在に至っています。
- (5)さらには、むすうご、は変化し、再度、う、が脱落して、むすご、となり、現在に至ったのです。
従って、上記の地名のうち、すごう(数河)が最も古い地名で、むすご(無数河)が最も新しい地名であると佐七は演繹・推察します。