高山市丹生川町に、根方、という部落がありますが、根方発電所が知られましょう。神通川の支流・小八賀川沿いです。読みは実は頭高四拍で、ごんぼう▼○○○、ですから、岐阜県の地名の中の難読地名のひとつでしょう。ただ今ネット検索しました所、戸数23、人口77のようです。とても小さな村ですね。大西村の半分以下でした。と言う事で根方の皆様、はじめまして。
さて筆者がわざわざお書きしますのも、三十年ほど前、筆者が高山市内のとある高校の一年生の時の思い出深い地名だからです。秋の遠足でした。バス旅行です。目的地は長野県上高地です。
ところで当時の筆者が、今はそうでもありませぬが、寝てもさめても考え続けていた事は異性の事。つまりは何日も前から、バスガイドさんはどんな人だろう、どうか私好みの方でありますように、と祈る気持ちであった馬鹿な高校一年生。そして当日ですが、待ちに待ったご対面。何とまあ、私のバスのガイドさんのお美しい事、お上品な事、いやあ、こりゃあ楽しい秋の遠足になるぞ。さあ、出発。
まだガイドさんになられて日が浅いのでしょうか、時々ちらっとご自身の虎の巻をご覧になっては、お話しなさるそのお姿もなかなか初々しく、佐七の心を魅了し続けます。やがてバスは丹生川村根方にさしかかり、山間にみえたぞ、おう根方発電所だ。彼女のガイドが始まります。皆様、右手をご覧くださいませ。白く見えるもの、発電所でございます。中部電力の、ねかた発電所でございます。 と、ほんの一瞬のご説明に、突然にグラグラと揺れだす佐七の心中をお察しください。( たっ、大変やぞ。間違えておっしゃるながい。しられんのやさあ(=ご存知ないのだ)。まんだ、わかいでなあ。 ) 臨席の友人鎌田は寝ていました。友人の迷惑もかまわず私は彼を揺り起こし、こりゃしんちゃん、おきれ(=おきろ)。ねてばっかおって。ほら、みえるろ、発電所。ありゃ(=あれは)ごんぼう発電所やもなあ(=だよね)。 と聞いてみると、寝ぼけ眼の彼はそちらをみやり、
そうや。けど、なんじゃわりゃ(=君は)。あんなもんで興奮して。小学生みたいなやっちゃな。今から上高地いくんやで(=行くのだから)、そこで思いっきり興奮せんにゃ。変なもんで起こすない(=起こさないでくれ)。 と再び寝入ってしまう鎌田。それが問題であると一日中、考え続けて、結局はお伝えできませんでした。
まだお若い新米のガイドさん、私がわざわざお伝えしなくてもいずれ直ぐに、ごんぼう、である事にお気づきになるでしょう。
また、いざかいもちひせん、私が次のトイレ休憩ですかさず彼女ににじり寄るならば、私もチャンスを逃さなかったという事になるのですが、いつお伝えしようと一日考え続けてもねえ。一日中、待ち受けむとぞおもふ、と考え込んでしまった佐七なのでした。精力漲る高校生の左七は年上の女性が好みなのでした。 おまけ 角川日本地名大辞典で今知ったのですが、後風土記には、当地には昔、その下流に笠根という村があり、笠根の方向にある村、という意味で、根方村、と名づけられたそうです。古代には、ねかた、と呼ばれていたとの記載もあり。これも是非、お伝えしたいのですが、待ち受けむとぞおもふ。 |