大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 地名考

上宝(かみたから)

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私:2020/11/8だが快晴にて絶好の紅葉ツーリングで、上宝まで行って来たよ。岐阜県高山市上宝町。別名、奥飛騨温泉郷。新穂高ロープウェーのある中部山岳国立公園の村だ。
君:あら、先だっても行ったわね。今年の秋は上宝は二回目じゃないの。
私:そう、二回目。前回はやや曇り空の幽玄の世界だった。
君:良かったわね、快晴で。
私:素晴らしいなんてものじゃない。岐阜県でも天国に最も近い里と言ってもいいだろう。
君:地名の由来を早速、調べたのね。
私:ああ、瑞祥地名である事はわかるね。
君:ええ、「上」は高原川の上流という意味よね。「宝」は槍・穂高連峰を「宝の山」に見立ててかしら。
私:ははは、残念ながら共に間違っている。もっとも僕とて、つい先ほどまで知らなかった事だけど。槍・穂高連峰から発するのは(がまだ)蒲田川だ。乗鞍岳から発した平湯川が合流して高原川になる。つまりは上流は高原川ではなく、蒲田川。その高原川は宮川の大支流で富山県では神通川と呼ばれるが、高原川の流域で一番に大きい町は何だろう。
君:神岡よ。岐阜県民ならどなた様も御存じよ。
私:その通り、つまりは高原川の中流域が神岡で、下流が茂住辺り、そして上流域が上宝だ。つまりは高原郷の30余の村が明治八年に合併して「上高原」ならぬ「上宝村」と名付けられた。「は」の脱落で俄然、言いやすくなったし、「宝」の字を当てて瑞祥地名としたという事。
君:なるほどね。神岡にはスーパーカミオカンデがあるものの、ひとつも天然温泉が無いのに、上宝となると途端に温泉銀座、つまりは奥飛騨温泉郷になるわけだから素敵な場所よね。
私:平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉。中尾高原は山肌から湯気が出ている。槍ヶ岳は時々、噴火するし。
君:でも今は火山噴火予知も進んでいるから大丈夫よね。
私:温泉に宿泊している限りは大丈夫だが、たまたま登山をしているとなると話は別だね。それに新穂高ロープウェーがあり、気楽に登山が出来てしまうだけにかえって怖い。遭難者が後を絶たない。僕はオートバイでまったりと高原川や蒲田川の潺(せせらぎ)を見ながら走るだけで十分に幸せを感ずる事ができる。
君:今回の紅葉について聞かせてね。
私:今年は数年に一度の当たり年。夏に雨が多く、夏が暑く、台風の直撃が無く、秋には気温の差が大きく、そして夜はぐっと冷え込む、これが紅葉の当たり年の条件。実は蒲田川だが、道路わきには雪があった。
君:道路の雪は大丈夫なの。
私:ああ、道が根雪になるのはまだ先の事だろう。槍・穂高・笠岳は真っ白だった。空は雲一つなく真っ青だった。すそ野は真っ赤、真緑、真っ黄色のパッチワークでそれはもう、絵葉書のような光景だった。中尾高原に登って、黄色や赤の紅葉の紅葉の森を潜り抜け、北アルプス大橋に至り、橋の麓でぼうっと笠岳を数十分、眺めてきたよ。
君:よかったわね。可児市からは片道何キロかしら。
私:200キロだ。大した距離じゃない。自宅を出て、関・金山線を走り、金山からは岩屋ダムのツーリング、馬瀬村から上呂に抜け、位山官道を一宮まで。ここでは御岳と乗鞍の冠雪を拝む事が出来た。一宮からは笠岳の頂上が見えた。あっ、あそこだ、という感じ。まあ、いつもの事だけど。
君:往復で400キロね。
私:その通り。ただし中尾、つまり北アルプス大橋に到着した時には午後の一時を回っていたので、帰りは高山で東海縦貫道に乗り、一気に濃尾平野まて舞い戻る事にした。
君:帰りのルートは。
私:高原川を下り、神岡に到着、神岡カントリー道路に入り、小萱(こかや)へ。船津高校の正門前に自販機がある。缶コーヒーを飲みひとやすみ。そこからも笠がよく見える。神岡町山田では山道に入り、R76国府美座線へ抜けた。誰も通らない道路。紅葉が素晴らしいのはいいが、舗装道路であるとは言っても落ち葉で埋め尽くされ、しかも濡れている、急坂のアップダウン、タイヤが滑ったらお終いなので、前後輪ブレーキを適当に用いトラクションをかける。なんとか無事に走り切ったが、初心者ライダーにはお勧めできないね。
君:あら、悪路を走ってももうこりごりじゃなかったの。
私:いやあ、国道ならぬ酷道ツーリングもそれなりに楽しい。ただしソロツーリングはリスクを伴う。だから林道だけは走らない事にしている。
君:マイカーで行けばいいのに。
私:まだ元気なうちが花。でも、いずれ足を洗わないとね。全国の海岸線を走破したらやめようと思う。本州、四国は全て走った。
君:じゃあ残りは九州と北海道だけ。変わった趣味ね。でもないかな。山国育ちのあなたが海を見て興奮するのは当然よね。

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