大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 地名考

高原郷(たかはらごう)

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私:高原郷という地名は現飛騨市神岡町あたりの古称・旧吉城郡の郷名。現在の高原川の名前に留まる高原の郷とは仁安元年(1166)の飛騨国雑物進未注進状(宮内庁書陵部蔵)の記載が最古だろうね。
君:ほほほ、頑張ってお調べなのね。古い名前、今や死語、幻の地名はわかったけれど、問題は語源よね。
私:そう。僕はひとつには山之村の高原(こうげん)をぐるりと囲むように流れる高原川だから、語源もそうではないかと別稿に記載したが、最近、少し考えを改めさせていただきたい。
君:死語の地名の語源なんてどうでもいいわよ。
私:いや、現に「高原川」という現役の固有名詞があるんだぜ。そんなわけにはいかないよ。高原川に失礼じゃないか。
君:あら、御免なさいね。という事で、別の説を思いついたのね。
私:その通り。高原郷の由来は、やはり高原川流域の地形そのものからかな。山之村は関係が無いのかも。
君:どういう事?
私:確かに高原川流域は渓谷・急谷で平野は少ないが、それでも上宝町本郷や神岡盆地には典型的な河岸段丘が発達している。特に本郷平と呼ばれる段丘は高原川の川床からの高度差が百m余もあるので、古代に用水路を引く事は不可能だったのだろう。近くの沢の水を利用して稲作が営まれていた事は想像に難くない。
君:つまりは高原郷の由来は高原川の河岸段丘、特に広大な本郷平の地形に由来するのでは、という事ね。もっと端的に、「高原郷」の由来は上宝町「本郷」だとおっしゃりたいのでしょ。
私:その通りだ。何も付け足すことは無い。
君:どうしてそう思ったの?
私:本郷平へ行けばわかるんだよ。そこにたたずめばピンと来るという訳さ。僕はフィールド重視、飛騨の隅々をオートバイで走っているし、山之村は日本のチロルと言われている村だから何度も訪れている。訪問が多ければ思い入れも深くなるというもの、必然的に高原郷の由来は山之村かな、と思っていたが、本郷平や神岡盆地(特に小萱あたり)を何度も訪れて高原郷の由来は河岸段丘を意味するのだろうと悟った。
君:なんども逢う人には愛着が沸くし、なんども訪れる場所は素敵な場所に変わるのよ。逆に、去る者は日々に疎し。遠くの親戚より近くの他人。ほほほ
私:そうだね。神岡、小萱、上宝、高原川、山之村、数えきれないほど訪れた。とても素敵なところだ。
君:問題は雪ね。冬は過酷よ。ほほほ

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