大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 地名考

吉城郡(よしきぐん)

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私:市町村合併等により古い地名が失われていく事に何とも言えぬやるせなさを感じる。
君:いつも同じ出だしね。手短にお願いね。
私:はいはい、吉城郡は平成の市町村大合併以前に存在していた飛騨の郡名。飛騨の中心は地勢的にも文化的にも高山市だが、吉城郡は飛騨の北を占め、高山市に隣接し富山県と接していた。古川・国府・河合・宮川・神岡・上宝の町村からなっていた。
君:名前の由来は。
私:平凡社・日本歴地名大系21(岐阜県)によると、吉城郡の古名は荒木郷。日本書紀に記載。延喜式にも記載。国府町宮木の荒城神社も荒木郷に由来する。
君:日本の歴史同様に古いのね。
私:その通り。建久4年(1193)、源頼朝が右近将官多好方を荒木の地頭に選任。この頃から表記が荒城に統一される。ただし「荒れ」の字が嫌われ、鎌倉末期から徐々に吉城が使用され始め、中世までは荒城・吉城が併用されていたが、近世には吉城に統一された。
君:へえ、元々は荒城だったのね。吉城は瑞祥地名だったのね。つまりめでたい意味、良い意味の言葉を市町村名に用いる事。
私:「ヨシキです」。そこへ持ってきて平成大合併の悲劇ともいうべき事件が。
君:ほほほ、飛騨の人なら誰でも知ってるわよ。つい最近の事だから。
私:まさかの国府町と上宝村の心変わり、吉城郡を離れ高山市と合併する事に。高山市は南隣の大野郡の大半、つまり白川村以外の町村をも合併してしまい、ここに全国一広大なる面積の高山市が出現してしまった。
君:高山市の独り勝ちのような感じね。
私:どうにも気持ちが収まらないのが吉城郡の取り残された古川・河合・宮川・神岡の残留四人組。飛び地で高山市に併合されるのもしゃくだし、それならいっその事、高山市に一泡吹かせてやろうという事で出来た新しい市名が「飛騨市」。
君:吉城郡にお残りの四人衆の皆様方は亜吉城市の市名では魂が救われなかったのよね。
私:古川町が行政の中心だから古川市でも良かったと思うんだけどね。
君:吉城市でも古川市でも、共に素敵な名前だわよね。
私:そう思う。また、あの当時、いっその事で片仮名の名前なんかどうだろう、という意見も出たらしい。
君:例えば。
私:飛騨山脈は、むしろ北アルプスの名前で知られている。だから「北アルプス市」。
君:なるほど。それも素敵な名前ね。
私:ところが、地元の中学生が猛反発。
君:どうしてなの。
私:学校の略称が「アル中」になってしまい、こんな名前は名乗りたくないから。
君:確かに。飛騨と山梨の中学生気質の違いね。山梨県は南アルプス市、自然と文化が調和した幸せ創造都市。
私:「ヨシキです」。鎌倉時代からの瑞祥地名・吉城を惜しげもなく捨てた吉城郡に残留の四人組の悲劇は更に続く。
君:えっ、どういう事。
私:当時、総務省が示した条件が合併人口が三万人以上を市と認定するというもの。古川・河合・宮川・神岡の吉城郡残留四人組あわせて何とかクリアできたので、よし四人組で新しい市を作ろうという事になった。裏切り者の国府・上宝なんかとは今後つきあうな、というヨシキの悲壮な船出だった。
君:でも、市に昇格という事は夢・希望がある事じゃない。
私:「ヨシキです」。市にはなった。その名も飛騨市。盛大に祝賀会が開かれただろうね。ただし、その後の神岡の人口減少に歯止めがかからぬ状況に。
君:神岡鉱山の閉山ね。ノーベル賞・カミオカンデは観光に結びつかず。
私:その通り。現在の市の総人口: 22,653人; (推計人口、2020年6月1日)。この人口の少なさは最早、市ではない。全国一、二を争う数字だ。我が町・岐阜県可児市だが、人口10万、私の住む西可児界隈ですら半径一キロ内に3万人が住んでいる。30年前は200万人都市・名古屋の名東区民だったが、当時の区民が20万人だった。
君:飛騨市は今後、どうなるの。
私:総務省にお聞きしたいね。
君:若しかして「飛騨市」改め「吉城郡飛騨町」、つまりは全国一大きな町として出直しとか。
私:全国一おおきな高山市。その北隣に全国一おおきな幻の町・飛騨町。嗚呼
君:全国一おおきな市といっても面積だけよね。
私:勿論だ。北海道に全国一の面積の市がありそうだが、実は全国一の面積の市は岐阜県にある。その名は高山市。総人口: 85,295人; (推計人口、2020年6月1日)つまりは人口密度が日本一低い市。行政も大変だね。選挙も大変。村に選挙カーが来なくて当たり前の土地柄だ。
君:全国の皆様へ、当サイトの管理人の出身地でございます。

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