飛騨方言他動詞・いのかす、ですが、共通語の、動かす、に相当します。
いのかす、は各地の方言としてのネット発信があり、同意です。
当サイトもそうですが、対応する自動詞・いのく(=動く)、をあわせ紹介しているサイトも多いようです。
古語辞典によれば、動かす(他動サ四)、は、力を加えて移動させる、感動させる(古今・序)、
という現代語に引き継がれた意味があります。うごかす、がいつの間にか、いのかす、に訛ったのでしょうか。
ただ訛っただけが何が面白いのかと思われる方が多いかも知れません。
実は、いのかす、が全国各地で方言として生きているのもむべなるかな、
古語辞典には いのく、がちゃんとあり、いのかす、
は、その他動詞化されたことばのようです。
飛騨方言・いのかす、はサ行動詞でイ音便になり、活用は、さん(=かさぬ)、いて(=かして)、す、す、しゃ(=かすれば)、せ、です。
飛騨方言では、いのかいで、と話す事も多いようです。
車いのかさんとだしかん(=車を動かさないとだめだ)、
車いのかいで、出ていった(=車を動かして出ていった)、
車いのかすぞ(=車を動かすぞ)、
車いのかす時間がない(=車を動かす時間が無い)、
車いのかしゃ(あ)えんや(=車を動かせばいいのだ)
車、ほりゃ、いのかせ(=車を、それ動かせ)
結論としては古代には意味の極めて似通った二つの動詞、うごかす・いのかす、が全国で使われていたのですが、
面倒くさいから、ひとつの動詞でいいじゃないかという事で、
多くの地方で、いのかす、が使われなくなってしまったと考えられましょう。
いのく、が訛って、動く、に変化した可能性も考えられましょう。
しかし、飛騨の人達は、千年も昔から、いまだに、こだわりを持って、この二つの
動詞を使っている訳です。言葉を大事にしているという事でしょう。
また、いのかす、の存在は、うごかす、の訛りどころか、否、
むしろ千年も昔から発音が変化しなかった という証左ですらあると言えましょう。