うたてい、は飛騨方言では、ありがたい、かたじけない、など百パーセントよい意味で用いられます。ところが、この言葉の元の言葉、古語名詞・うたて(転て)、および古語形容詞・うたてし(転てし)、は専ら悪い意味で用いられますので注意が必要です。
まず、うたて(転て)、ですが、ウタタの転で、物事が移り進んでいよいよ甚だしくなっていくさま、それに対していやだと思いながら諦めて眺めている意を表わします。
古語「うたてし」は従って「心に染まない感じだ、いやだ、あいにくだ、なさけない、心が痛む、気がかりだ、気の毒だ、わずらわしい、やっかいだ」など、もっぱら悪い意味で用いられます。
さて現代語・うたてい、つまりは方言ですが、全国各地で用いられ、やはり古語「うたてし」と同じく専ら悪い意味で使用されています。ところが、ひとり岐阜県のみ、うたてい、を全く逆の意味のいい意味で用いているのです。実は飛騨地方だけでなく、美濃の一部地域でも、うたてい(おたてい)、を、申し訳ない、などのよい意味で用いるようです。飛騨方言では「恐縮してしまいます、ありがたすぎる話です」の意味なのです。
結論ですが、飛騨・美濃、要は岐阜県民の間では使っても差し支えはなかろうが、うかつには他県の方に対しては使えない不思議な言葉「うたてい」なのです。
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