共通語・他カ下一「かたむける」を飛騨方言では他ガ下一「かたげる」といいます。古語では、自動詞・他動詞の区別なく動カ四「かたぶく傾」ですね。中央では、古語・かたぶく>かたむく>かたむける、のような変化があったのでしょう。
肝腎の飛騨方言「かたげる」の成立はどうでしょう。共通語が更に進化しているのでしょうか。つまりは、かたぶく>かたむく>かたむける>かたける>かたげる、と更に変化を遂げた言葉なのでしょうか。大変に疑問ですね。
筆者は、飛騨方言・かたげる、の語源は他ガ下ニ「かたぐ担」ではないかと考えます。つまりは、飛騨方言は中世あたりには、古語の、かたぐ・かたぶく、の両者に意味の混同があったのでしょう。そして登場願うのが明治の国語辞典・言海、です。
例えば、捧げる・ささげる、は、捧ぐ・ささぐの訛り言葉、との記載です。つまりは、飛騨においては、かたぶく>かたぐ>かたげる、と変化した考えるとつじつまがあうのです。かたぶく>かたぐ、の変化は中世から江戸にかけて、そして、かたぐ>かたげる、の変化は明治時代あたり、という事になりましょう。 ps 2021/10/5 前田勇「江戸語大辞典」に他ガ下一「かたげる」がありました。天明2年・山下珍作「少し首をかたげかんがへて」
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