飛騨方言では、返す・かえす、の代わりに、かやす、
と言いますが、全国の方言になっています。
古語辞典によれば、かへす・返す、は古代からの言葉ですが、
かやす・返す・他サ四、は近世上方語のようです。
飛騨方言は東京式アクセントで、かえす・かやす、共に三拍中高です。
ただし飛騨地方はサ行動詞のイ音便の地方であり、連用形は、かやいで、になります。
また、ひっくりかえして、は、ひっくりかやいで、になります。
飛騨及び全国各地の方言・かやす、はこの近世上方語が残った形
である事は言うまでもありません。
畿内の方言に多いのは当然としても、
近世・江戸時代は天領であった飛騨の方言でもある
事が筆者には不思議です。
実は、かやす、という動詞は現代の共通語においても、
たがやす・耕す、という言葉に生きています。
たかえす・田返す、が語源のようです。
つまりは、かやす、は近世に上方で流行した言い回し
ではあるにせよ、方言東西対立の中、江戸の言葉にはならず、
明治以降も中央の言葉はならなかったという事なのでしょう。
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