飛騨方言・ごて、ですが、亭主、ご主人、だんな、家長、などを意味することばです。ネット検索しますと、肥後方言がヒットしました。意味は同じです。従いまして飛騨の俚諺ではないようです。
つまりは、ごて、は古語辞典に記載があり、漢字は御亭と書き、意味はご亭主であり、これが略された言葉として近世までは実は共通語であったという次第です(柳樽)。古語辞典には、ごてい(御亭)の記載もありますので(西鶴・胸算用五)、江戸時代は、ごて、と、ごてい、が共に用いられていたのでしょう。飛騨方言では、ごてい、はありません。飛騨方言では、ごて、は尾高アクセントはです。また飛騨方言では、ごて、がご主人の意味であっても、例えば使用人の方がご主人の事をごて、と言うことは無く、ごて、は専ら、家長の意味で用いられていると思います。
飛騨方言では、あなたの家の、という意味で、そこの、と言います。「そこ」は頭高アクセントで「あなたの家」という意味です。つまり、そこのごて、といえばあなたの家のお父さん、と言う意味です。"そこのごて" は "そ" と"て" にアクセント核があります。そこ、の対象者つまり、あなたに相当する人物は、はごての奥様、お子さん、ご両親様、など同居家族であればどなたであってもかまいません。
次いで、彼女のご主人ですが、飛騨方言では、ありぃのごて、です。実はありぃ、はそもそも彼の意味でも、彼女の意味でも用いられる人称代名詞ですが、ごて、が男性に対する敬称である以上、ありぃのごて、の場合は自動的に、彼女のご主人、の意味になると言うわけです。
あの家のお父さん、という場合はあそこのごて、と言えばよいでしょう。ただし、その家のおじいさんがまだ大変お元気で、家長であれば、ごてはそのおじいさんを示し、あるいはおじいさんはよぼよぼのご隠居で、実際は息子が家長である場合は、ごては息子を示します。
女が家長である家の場合は、かかさ、と呼ぶ言い方があります。あなたのお母さん、は、そこのかかさ、あの家のお母さんは、あそこのかかさ、です。かかあ天下のお宅では、ありぃのかかさ、という言い方もあるのかもしれません。 |