散文調で申し訳ありませんが、久々の俚言発見の
ような気がします。
飛騨方言動詞自ラ・むすばる、とは、
むすばれている状態である、と言う意味です。
他動詞・結ぶ、が自動詞化されたものには
違いないのでしょうが、
もとより可能動詞ではありません。
むすばる、の元々の意味は可能動詞ではなく、
むすんではいけないものがむすばれてしまっている状態にある、
という自動詞の意味なのでしょう。
例文と参りましょう。
テンスがむすばっとる。こまったこっちゃ。
テンスとはおそらく大西村の方言でしょうね。
飛騨方言としては正しくは、てぐす、では
ないでしょうか。天蚕糸。
とちかんじょ・くすさん、を生贄にして
酢酸・酢あるいは水中で伸ばすと出来上がる釣り糸
の事です。
釣り糸・テンスが、むすばっとる、とは
むすばれてしまって困った状態である、という
意味です。その糸を釣竿に結ぶ事ができる、という可能動詞
の意味ではありません。
以上が前置きです。このように飛騨方言では、他動詞・結ぶ、
に対して、自動詞・むすばる・本来結んではいけないものが結ばれた状態である、
があったものの、やはり、むすばる、も
いろんな使い方が既にあると言う事なのでしょうね。
ひとつには可能動詞・むすばる、です。
例えば、
あんなでけえひぼがようむすばったなあ。
と言えば、
あんなにも大きな紐がよくぞくまあ、
結ぶ事ができたものですね。
普通はできないぞ、さあ拍手!!
と言うのがまずは解答例でしょう。
東本願寺に陳列されている毛綱がよい例です。
またさて、
パラシュートの紐はちゃんとむすばっとる。安心や。
紐が結ばれている、という他動詞の受身形に他なりませんね。
この文例は可能動詞ではありません。
命綱を点検して、確かに結ばれていた、という意味です。
可能動詞・つまりむすべるぞという意味は実はむすんでいないと言う事、
の意味はありません。
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