飛騨方言"ねこだ"ですが、わら製のリュックサックを言います。
その昔は大西村のどのご家庭でもお手製の"ねこだ"を用いていたでしょうが、
勿論、近年に既にナップザックなどに取って代わられ、"ねこだ"を見たことが無い以上、"ねこだ"という言葉も
聞いた事が無いという方が多いでしょう。
ねこだの大きさは縦横三十センチ程度で、まさにランドセルの形です。ただし、ねこだに蓋はなく、入り口は開放です。
ねこだを両肩に背負い、山仕事などに出かけるわけですが、最も大事な入れ物は昼弁当の"割りご"です。
"割りご"は木製の箱で蓋が本体程度に深く、二人前のご飯が詰められるデラックスサイズです。
いわばこのちっぽけな飛騨方言・"ねこだ"をわざわざ、ネット発信しなければならない理由はひとつ、
古語辞典に実は"ねこだ"がありますが、意味が違うからです。
三省堂版新明解古語辞典には"ねこだ"は"わらのむしろ"とありますが、飛騨方言ではそのような意味は全くありません。
共通語・むしろは飛騨方言でも"むしろ"ですし、洒落にもなりませんがむしろ、"みしろ"と発音される事もあるのです。
"ねこだ"+"方言"で検索しますと、出雲方言がヒットしました。案の定、出雲方言・ねこだは、わらのむしろ、の意味でした。
ところで、飛騨地方では古くはむしろの事を"ねこだ"と言っていた時代があったのでしょうか。私はそう思いません、現に
むしろ・みしろが使われている以上、従来からこれらの言葉だったのでしょう。
私の推察ですが、もうひとつ、重要な単語、飛騨方言・おねる、を更に紹介しましょう。赤ちゃんをおねる、というが如く
普段何気なく使用している、共通語に言う"背負う"という意味の動詞です。そして、だ、の語ですが、これをあれこれ
詮索しますに"駄とは"をキーワードにネット検索しますと、千駄木、千駄ヶ谷の地名由来を記載したサイトがヒットし、
古語では駄とは、馬一頭の背中に乗せられる俵の事、つまり二俵を一駄という物量単位であると記載があります。
さて結論です。つまりは、飛騨方言・ねこだは、"わらむしろ"と同じくわら材料製品という意味で
"ねこだ" というのではなく、
飛騨方言・おねる+小ないし子(つまり小さいもの)+馬に乗せる物量単位・駄
から成る合成語ではないかと考えたのですが、うん、完全に外れている可能性もありますね。
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