共通語・ゆうべ、は夕方(例、今宵あなたと音楽の夕べを)、昨夜(例 ゆうべの音楽会)
の二つの意味を持つ同音異義語です。意味を混同してはいけません。
そして、飛騨方言・よんべ・ゆんべ、ですが、共に昨夜の意味で用いられ、
夕方(例、音楽の夕べ)の意味はありません。
ちょいと訛っているだけのつまらない話かと思った方よ、さようなら。
まずは飛騨方言ぬきの共通語の話です。
さて、ゆふべ(夕方)は古語辞典の重要単語ですが、復習しましょう。
上代平安時代の時の概念は一日の始まりはゆふべ(夕方)で、ついでよひ(宵)、
よなか(夜中)、あかつき(暁)、あした(朝)、ゆふ(夕,=昼の時間の最後)、で一日の
終わりです。
次いで、ゆうべ(昨夜)ですが、古語・よべ(昨夜を当てる)から来た言葉であり、
語源が違っていたという次第です。そしてその撥音化よんべ(昨夜)が既に
土佐日記の古典にみられます(よんべのとまりよのこととまり異泊をおひていく)。
今宵あなたと音楽の夕べという意味では上代から一千年の時を経ても一切意味は
変化していません。ところが、よべ・よんべ、がいつのまにか、ゆうべ、に変化してしまった
結果、ゆうべ、は同音異義語(夕方、昨夜)になってしまったというわけなのです。
次いで飛騨方言のお話です。
よんべ、を用いるのは共通語・ゆうべ、が訛ったわけではなく、
古語が現代に残る飛騨方言は実はかたくなに発音を守ってきたのです。
訛ったのは実は"よんべ・よべ"を"ゆうべ"と言い出した東京人様がたなのよ、ふふふ。
ところが飛騨方言の、ゆんべ、はいたたげません。
よんべ、がいつのまにか、ゆんべ、に訛ったのでしょう。
あるいは共通語・ゆうべ、が、ゆんべ、に訛ってしまったのでしょうか。
ですから飛騨の皆様へ、歴史ある飛騨方言を話そうと
思えば、よんべ、を堂々と使いましょう。
ただし、ゆんべ、なんていぅ風に訛ってゃあ笑われてまうでだしかんさ。
よんべ、やでな。たのむぜな。
|