飛騨俚諺動詞・“げばす(=失敗する)”の民間語源に(下馬する=落馬する⇒失敗する)説が広く信じられています。
別稿・下馬の意味に
下馬するとは落馬しない事を論拠に同記事に筆者は異論を唱えました。
筆者なりに先ほど思いついた事がありますのでお示しします。
佐七はずばり、蹴外す(けはずす、他動詞)、が語源ではないかと推察します。
飛騨俚諺・げばす 蹴外す 下馬する
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自・他 自・他動詞 自・他動詞 自動詞
活用 四段 四段 サ行変格活用(サ変)
意味 失敗する ミスシュートする 失敗せずにそっと
つまり失敗する 馬から降りる
未然 げばさない けはずさない
−>げばさん −>けはずさん
連用 げばして けはずして
−>げばいて −>けはずいて
イ音便可 イ音便可
終止 げばす けはずす
連体 げばす けはずす
仮定 げばせば けはずせば
−>げばしゃ −>けはずしゃ
命令 げばせ けはずせ
つまりは、蹴外す、は全ての項目において完全に一致しているのです。
一方、下馬する、は全ての項目において不一致です。
私が、蹴外す、がげばすの語源ではないかと直感している根拠です。
また、下馬説を信ずる諸氏へ、
安易な想像で語源を論じてはいけない、という事ではないでしょうか。
議論を進めます。もっと大胆に推察しましょう、古語の飛騨方言において
けはずす>げばずす>げばす
と変化したののでないかと私は推察します。
(1)飛騨方言ゆえ最初の音は濁音化したのでしょう。
(2)ずす、はチト言いにくいので一語脱落したのでしょう。
この二点とも方言、特に飛騨方言に見られる現象ではないでしょうか。
ついでですが、筆者が、蹴外す(けはずす、他動詞)、を思いつくに至った
経緯を簡単にお示ししましょう。
当初から、何かの動詞が飛騨方言特有に訛った動詞である事を直感していました。
また、K音は強烈な音なので例え一千年を経ても変わらないはず
(例 異けなり>けなりい>けなるい)、
従って、複数辞典のカ行の動詞にのみ着目してページを繰ってみたところ、
およそ十分の作業で、蹴外す(けはずす、他動詞)、が
目に飛び込んだというわけです。
うーん今日は気分は最高、なんという楽しい日だったか、
いやあ、それにしても方言、特に言葉のルーツを考えるって面白いですね、
それでは皆さんまた来週、サイナラ、サイナラ。